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白と黒



先月末に仕事で大阪へ行く機会がありました。1泊2日の仕事を終えて、せっかくなので翌日まで延泊することにして3日目はぶらりと京都へ出かけることにしました。ちょうどタイミングよくKYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)が開催中だったので、レンタサイクルを使って市内に点在するあちこちの会場をはしごしながら鑑賞することにしました。

こんにちは、鶴田です。

僕が最後にたどり着いたのは京セラ美術館内にある川田喜久治のブース。伝説的な写真集「地図」の展示でした。世界的に著名な写真家・川田喜久治の作品は「現実物質と現象世界の交差を写し見る世界」と評されることも多いようです。




うっすらと透け感のあるコットン生地。不規則なピッチのストライプを織り柄で表現した白いシャツ生地に、不規則なパターンの黒いプリントが施してある。上の写真で言うと「白がシャツ生地本体、黒が透けていないシャツ生地ストライプ部分、グレーが透けているシャツ生地に黒いプリントが乗っている部分」と…何を言っているのかさっぱりわかんないよ!と言われてしまいそうな、この説明も…。



少し離れた位置から眺めてみると、ハイ、ご覧のとおり。単なる「白黒いシャツ」となるわけです。

m’s braqueが得意とするアイテムのひとつ「スタンドカラーシャツ」は、例えば同ブランドの代表作・ハーレムパンツも連想させるようなどことなくエスニックモチーフなアイテムとして過去のコレクションにも繰り返し登場してきました。



通常ではカフスボタンに使われそうなほど小さい10㎜径のフロントボタンも、m’s braqueならでは。クラシカルな印象です。



エスニックやクラシックという要素に共通して言えるのは「伝統的、つまり過去の一点から現在まで脈々と受け継がれてきたスタイル」ということ。それらが在る場所が都会なのか荒野なのかアフリカなのかパリなのか日本なのかはさておき、昔も在っていまも在るということ。時間軸の話です。

或いは、この透けるほど薄い「ストライプ」というモチーフは、その時間軸の象徴であるとも言える。



一方で、その「伝統的なストライプという柄」をすべて覆い隠してしまうほど全面にびっしりと配された、「鱗」なのか「雪道の足跡」なのか「幾何学」なのか判然としない、柄。



この柄を纏うことで「スタンドカラーのストライプシャツ」は伝統が束縛する重たさから軽やかに逸脱を始める。

歴史と幾何学が交差する。



とはいえ。

この文脈で、冒頭で紹介した川田喜久治の作品、つまり「現実物質と現象世界の交差を写し見る世界」を回収することはできません。それほど軽い作品では到底ない、あれは。

“ m’s braque ”
– COTTON STAND COLLAR SHIRT –
¥42,900- (tax included)


しかし、ひとつだけ言えることがあるとするならば、ファッションもまた「現実物質と現象世界」が交差する世界のひとつです。例えば目の前にある洋服。例えば、トレンドという現象。いずれも人間という存在が生み出した、たしかなものと不確かなこと。近くで凝視しても見えないものが遠景から浮かび上がることのある世界で、たしかなものと不確かなことが一瞬で入れ替わることがある。

衣類という身近なものを触媒として、そういった不可思議な気分を誘発することができる点で僕はファッションが好きです。本来は実体化不能なものをなんとかして実体化しようとする試みは、すべての写真家が映画監督が小説家が建築家が画家が舞踏家が音楽家が行ってきたことであり、ファッションデザイナー・松下貴宏が挑み続けている世界と同じであると思っています。そして、僕がファッションという言語化不能なはずなものを言語化するためにあがき続けていることにもまた、同じ願いが込められていると思って(思い込んで)います。

こういった人間の行いすべてが近くで見ると小さな点であり、しかし俯瞰で見ると大きな地図となっている、歴史となっている。たったシャツ1枚から、これほど壮大なテーマを想像すること自体、あるいは滑稽なことなのかもしれません。しかし、僕にそう思わせた時点で、このシャツには(例えば僕が妄想したとおりの)壮大な意味があり、一方で少し離れた位置から眺めてみると、ハイ、ご覧のとおり。単なる「白黒いシャツ」となるわけです。

さぁ、この「スタンドカラーシャツ」は、果たして何柄ですか?

意味があって、意味がない。

松下貴広は、やはり、たしかにデザイナーなのです。是非、このシャツに袖を通して感じてみてください。言語化不能なものは、肌で感じるしかないのです。





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鶴田 啓

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