ヘンリーとオープン
日差しが夏らしくなってきましたね。湿度が低いうちはまだ救われていますが、いよいよ灼熱の季節が近づいてきたことを予感できるような光。6月も後半ですからね。
こんにちは、鶴田です。
夏のカットソーと言えば、Tシャツ。Tシャツを持っていないという人はほとんどいないでしょう。汗をかいたときに乾きやすいのは実はシャツ生地の方だったりしますが、やっぱりTシャツやカットソーの解放感は夏向きな感じがしますね。
そして、Tシャツ生地、いわゆる普通の天竺編み以外にもカットソーの生地となるものはあります。先日ゆうとが紹介していた「コットンカノコノコノネック」、そう「鹿の子」も夏の定番的素材です。でも、鹿の子といえばポロシャツ=ゴルフを連想してしまったりして、デカいサイズや古着ならまだ全然いいんですが、普通サイズの新品鹿の子ポロを真面目に着るとちょっとオジサンくさい。ということで、SADEの「このネック」みたいにちょっと特徴的なデザインに乗っている方が僕らには何となく気持ちよかったりします。
鹿の子といえばヨーロッパのスポーツウェアから生まれたイメージがありますが、今日紹介するのはFRANK LEDERから届いたカットソー地のトップス2種、オープンカラーシャツとヘンリーネックのTシャツです。
細かい幾何学柄が特徴的で、どことなくレトロなムードです。どちらもデッドストックの生地らしく、現代ではほとんど見かけることのないカッコいい生地。ここでいう「JERSEY(ジャージー)」とは伸縮性のあるメリヤス編みのこと、つまりカットソー生地です。ネック部分からちらりと見えている裏面からも分かるように、これはダブルジャカード。要するに、シングルジャカードと違って、裏も表のように見える編み方。手触りは鹿の子を少しだけ柔らかく平らにした感じ。ネイビーは綿80%・麻20%、赤は綿100%です。
幾何学柄とはいえ、かなり小さなパターンなのでコーディネート上で構える必要は全くなし。無地と同じつもりで着てしまって大丈夫。
気の利いた位置にポケットふたつ。
適度に短めの着丈はなんだか新鮮。ロング丈でもショート丈でもない「ごく普通のバランス」は、今の時代において逆に特徴のひとつかもしれない。こういったニュートラルなフィッティングのものは今着るとけっこう気持ちがいい。
FRANK LEDERには長い年月の中で「変化した部分」と「変化しない部分」があるけれど、このシャツにはフランクの「変化しない部分」が、とても良い意味で反映されていると思います。
コーディネートのアクセントは他の部分でいくらでも付けることができるし
いっそ、これくらい全身ニュートラルなバランスに振り切るのも、かえって新鮮に見える。
どこにでもいそうな、普通のおじさんのバランス。でも実際には、どこにもいないおじさんのバランス。それは昔からフランクの得意技だった。
むかし見た、映画の脇役みたいなバランス。
でも実際には、どの映画にも出ていない脇役のバランス。
海辺ではしゃぐ少年のようなバランス。
実際には、どの海辺にもいない少年のようなバランス。
コートを羽織れば、少年から男に変わる。
チェックパンツを合わせれば少年。
ジャケットを羽織れば男。
本を読めば文系。
後ろ姿は男の中の男。
考え事をするときはボタンを留めて。
典型的な何かのようであり、ではそれが何かと訊かれたら、答えようのない何か。
真夏において、脇役は主役。彼らの名前はヘンリーとオープン。デッドストックの生地を身に纏い、古参の名脇役に見えて、実はどの映画にも出演していない男たち。どこかで見たことのあるような顔をしながらも、実際には、どこにもいないおじさんのバランス。実際には、どの海辺にもいない少年のようなバランス。
それは昔からフランクの得意技だった。脇役のような主役を作り上げること。このシャツにはフランクの「変化しない部分」が、とても良い意味で反映されていると思います。
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鶴田 啓
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