ツンツンしている
ちょっと前にも「肩」の話をしましたが、今日も「肩」の話をします。
「肩」の話をするということは「肩以外」の話をすることにもなるんですけど、どうぞお付き合いくださいませ。こんにちは、鶴田です。
前回の「肩」は「本気のパワーショルダー」って話でした。今回の「肩」は何ショルダーと呼べばいいんでしょうか?どれどれ、どちらの肩のことを言っているの、あなた、さっきから?

ドシン。この肩です。

どんな感じ?このお方。

このお方の、お肩。
「御肩」、おんかた、って尊敬の接頭語を乗せてもいいくらい、ツンツン尖った、高貴な御肩。

先日書いたrenomaの「パワーショルダー」は、その名のとおり「幅広で」「厚みがあって」「力強い」そんな肩。しかし、この御肩は「コンケーブショルダー」とも「パゴダショルダー」ともひと味違う、お顔立ち。そもそも「コンケーブ」「パゴダ」のお二方は、襟元から肩先にかけて窪むように湾曲・カーブしたショルダーライン、いわばトミー・ナッターとか、アレキサンダー・マックイーンとか、ピエール・カルダンにあるような、方々。
じゃあ、一体どなたなんですかね?それらの方々とも異なる顔をしたこの御肩は?
肩自体もそうなんだけど、このジャケットの独自性は肩とボディのマッチングにある。



前身ダーツは無し、シェイプのないバックスタイルは少し泳ぐような感じ。テーラードジャケットというよりはミリタリー由来のコートみたいなボディに、立体的すぎるくらい立体的な御肩が鎮座している。ツンツンに尖った顔をして。


スクエア気味のフロントカットはボタンレス、裾は少しだけ左右にカッタウェイしている。なぜ、このボディにこのショルダーがセットされている?うーん…独自性。いや、ここでデザイナーの意図や思考回路を想像することには意味がないので、すぐにやめますが。
とりあえず、資料ベースを含めて、ほとんど見たことのないような形状の御肩が、いま、僕らの目の前にいらっしゃるという事実。初対面の緊張感は多少あれど、ツンツンな人ほど打ち解けてしまえば仲の良い友達になることも。


表面上で敬語を使って、他人行儀に敬えば敬うほど距離が縮まらない関係性、なんてのはよくある話。ここはひとつ、僕らの方から積極的に声をかけてみる方が得策。だって、この機会を逃すと、これほどツンツンした人とお近づきになるチャンスは金輪際ないわけです。名前も何も知らないけど、この御肩、別にいいじゃないですか。気軽に声をかけてみれば。

そういえば、ツンデレって言葉は「特定の人間関係において敵対的な態度と過度に好意的な態度の二つの性質を持つ様子、またはそうした人物を指す」ようで。こうなるともはや、しっかりと仲良くなって確かめてみたいですよね。この御肩がデレデレと自分に懐いてくれる姿を。

¥157,300- (tax included)

実際に近くで見ると、肩山のおかしな位置でいびつに角ばったプレス跡が残っていたりして、まるで職人が袖のいせ込みを途中であきらめて投げ出したかのような「不完全の美」にさえ思えてきます。

バサッと羽織っても、ツンと尖っている。
ツンと尖っているけど、ラフに羽織ることができる。

港区・青山にあるMANHOLE。以前から知っているけれど、なんとなく入りづらい感じがして未だに行けてない。なんて。
MANHOLEは決してツンデレで売っているお店ではないけれど、たま~に聞こえてくるそんな声。でもね、実際に着てみて、触ってみてください。肩がツンツンしているなんて、実は大したことじゃないんですよ。この御肩、想像よりもずっとチャーミングな表情を見せてくれます。何事も、遠くから眺めるだけでは分からないことが沢山あるもんです。
CLASSとMANHOLEに共通して言えること。それは先入観を取り払って洋服を楽しむ、ということ。たまにはデレデレさせてくださいよ。
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鶴田 啓
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