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レテに浮かんで


小さい頃、太刀魚釣りに連れて行ってもらいました。
船で沖まで出て、あるポイントまで来たら、停まる。ピュッと竿を投げる。すぐに食いついてきました。薄っぺらくてヒョロ長いのに、凄く引きが強くて、驚きました。釣り上げた時は気持ちよかったな‥
ニョロニョロピチピチ。ギラギラ輝いていました。とてもいい天気でした。
お刺身も、焼いたのも、美味しかったな‥鍋にも入れてくれたっけ‥タチウオ三昧。捌くの、大変だったろうな、ありがとう。

ぼやけた銀色の筋の写真を見ていたら、こんなことを思い出しました。


表紙かっこいい



『レテに浮かんで / floating on Léthé』
写真家: 熊谷直子さんの写真集です。

MANHOLEには、(いらっしゃったことのある方はお気づきかもしれませんが)各所にさまざまな種類の本が在ります。積まれていたり、並べられていたり。それらは河上さんや中台さんの趣味や気分だったり、はたまた全然違う誰かの趣味や気分だったり。
「たくさん本が置いてありますね〜」と言われたり、「これは‥買えない‥ですもんね?」と尋ねられたりする事もたま〜にあります。
いや、実は買える本も置いてあるんですよ?入口の辺りとかに、買える感じで置いてあると思います。

もちろん、最近お店にポツンと積まれたこの『レテに浮かんで』も買えます。
是非読んでみてください。

唐突にこんな現実的なお知らせをしたのは、現実的なことはここらで先に置いておこう、と思ったからです。
まあ、写真は「誰かの」という意味では現実的かもしれませんね‥なんつって‥



「写真、興味あるんですけど、ワカンナイんですよね‥」
なんてことをお思いの方いらっしゃいますでしょうか。
その気持ち、全く分かります。
むしろ、「ワカンナイから面白い」んですよ、きっと!ぼくはたぶん、先ずそう思って見ているはずです。見ましょう。

「ワカンナイ」こと。
「見ようとしない」から「ワカンナイ」のとは訳が違います。
ワカンナイことには、無条件で驚けますよね。「ゥワァッ!!」とか「ビクッっ‥」だけが驚きではないです。驚くことは楽しいことだし、大事なことだと思います。
逆に、驚けなくなるのは、悲しいことだと思います。
知らない土地に行けば驚くし、見慣れた街に驚かされる事もありますよね。
ワカンナイことに驚いたって、何か「分かる」ことがあるとは限りません。たぶん。

この『レテに浮かんで』も、そりゃ分かりません。
ぼくはこの写真集で初めて熊谷直子さんという方の存在を知りました。もちろんお会いしたことはありません。でもこれは「熊谷直子さんの撮った写真たちの集まり」であるから、「一度は熊谷直子さんの前に在った光景」ですよね。

この写真集の中には、ぼくには何処だか見当もつかない写真や、光が溢れて何なのか判別つかない写真、鮮明なんだけど一体これは何?という写真がありました。
でもそれはもしかしたら、あなたの何かと結びつくのかもしれません。記憶だったり想像だったり。関係もないのに。
ワカンナイから、いくらでも働くはずです、想像力。


目の前の身体にフォーカスしてその生と死を手繰り寄せながらも、実は一旦近づいたそれが己と切断される瞬間を撮っている。それは「やがて失われること」を知っているからこその、本能的な切断である。

(安東崇史-TISSUE PAPERS主宰『レテに浮かんで』巻末より引用)



「今、この瞬間を捉える、捉えた。」という気持ち、というんでしょうか、捉えようと思ってシャッターを押したという事実、ということなんでしょうか。それはたぶんいわゆる「意図」とはちょっと違います。気持ちなんて写真には写りませんが、きっと在りました。見ていれば、それはぼくたちの心にワープして、湧いてくるかもしれません。どんな形かは分かりませんが。

ふぅ、見ましょう、なんて言っておきながら自分でもワケの分からないことを長々と書きすぎました。
写真って面白いですね。あと少しだけ‥‥

ここにある写真の断片、一枚一枚に、ぼくたちに向けての「意図」はないのかもしれません。
それを、「意図」と呼んでいいのか分かりませんが、透明な糸のようなもので繋ぎ合わせたり、並べたりしたのが、編集/デザインの安東さん。
元々並んでいなかった二枚が並ぶことで、なんだかユーモアを感じたり‥フフッ‥
色んなのが、湧いてきました。

もちろん、ひと目見た瞬間、フフッと目を奪われるような一枚も。プールでバシャっとなってる子どもとか、風船のやつとか‥キリがありません。
写真集、面白いです。

熊谷直子 “レテに浮かんで / floating on Léthé”
¥8,800-(tax included)



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