てらてらひかる
一見するとブレザー。二度見してもブレザー。
咳をしても一人。
こんにちは、鶴田です。
てらてらと光る、変な生地。涼しそうなのか、あったかそうなのか、春夏秋冬の判断がつかない、変な生地。
縦落ちしない不思議なドレープ。
ヘリンボーンツイードやタートルネックのセーターに、つまり秋冬アイテムに似合っているんだか似合っていないんだか分からない、なんともとらえどころのない春夏秋冬感の「無さ」。
テーラードジャケットの「肝」とされる肩回りのフィッティングもブヨブヨ、ふわふわ、変な感じなんだよなぁ。
てらてら光る、変な生地。ポリエステル74%×レーヨン24%×ポリウレタン2%、つまり自然素材一切なし、化学的に生成された繊維だけで構成された、変な生地。
エレガントなドレープもまるで無い。
袖の内側には謎の切り替え二枚袖。
太めの上襟ちょっと不細工。
襟を折り返せば、第一ボタンまで留めることができるけれど、かといって「僕はクラシックです」みたいな顔をしているかと言えば、そうでもない。
リブニットやデニムと普通に合わせても。
グレンチェックのパンツと素直に合わせても。
フリルシャツやカラーレザーグローブとグラマラスに合わせても。
ばっちり似合いそうでいて、どこかでばっちり似合わない。
黒いブロードシャツ生地よりもてらてらと光るネイビー、ちょっと小さめで間抜けなメタルボタン径、身体にフィットしそうでしないプロポーション…。
自由律俳句(じゆうりつはいく)とは、五七五の定型俳句に対し、定型に縛られずに作られる俳句を言う。季題にとらわれず、感情の自由な律動(内在律・自然律などとも言われる)を表現することに重きが置かれる 。季語もなく、韻律の規則もなく、素直に表現されるその句はより直接的に作者の心情を語るとされる。
「咳をしても一人」
これは、種田山頭火と並ぶ自由律俳句の旗手・尾崎放哉の代表的な一句。まるで「ブレザーたるものかくあるべし」という定型を嘲笑うかのように自由な姿で佇む、m’s braqueから届いたこのジャケットは英国の伝統やアイビーリーグの文脈から見ると、いかにも自由な韻律を踏んでいる。
「袖の内側には謎の切り替え二枚袖」「太めの上襟ちょっと不細工」「藍色の生地ドレープ無しで只光る」「間抜けなメタルボタン小さい」
春夏秋冬のどの季節にもフィットしない、伝統のコンテクストに易々と乗らない。パリならではの自由な気風をこのブレザーにもしも感じたのだとしたら、言葉を尽くしてそれを誰かに説明する必要はない。ファッションは自分自身の心を正直に語るためのツールでしかないのだから。服を着ても一人。歴史に縛られるな。他人に囚われるな。これをブレザーだと思う必要すらない、自由なジャケットを、是非どうぞ。
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鶴田 啓
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