熱く燃えて、赤

お店それぞれの趣味嗜好を交えながら木型、革、ソールの仕様、付属の指定をしてオーダーするF.LLI Giacomettiには基本的に「別注」が存在せず仕様変更に留まる。と、僕は思っている。
ぼーっとしている間に思いつくような安直なアイデアが入り込む隙がないくらい、我々からオーダーを取る段階で既に完成しているということだ。
木型を一から作成してそれをずっと使い続ける、という手段をとれば「別注」になるのかもしれないけれど、移り気な僕たちにその方法は向いていないし「結果的にこの形の高級既製靴を数百足売った」ならば良いけれど「これから俺たちはこの形の高級既製靴を数百足売り続ける」という覚悟を決められるような自信とアイデアを残念ながら今の僕は持ち合わせていない。


僕はそんなF.LLI Giacomettiが好きだ。なんでもやらない、やらないことはやらない。
革の制約、木型の制約、工場の得意とする技術という制約、既製靴という制約。
その制約は「出来ない理由」ではない。彼らが彼らの仕事を100%行うために存在する。
やることは徹底的に、やる。
それを100%以上の物にしたいならば、我々が上がってくる靴に対して「自分たちならこの革のこの靴をこう履きたい、こう提案したい」という部分のみに向き合えばいい。わかりやすい。気持ちがいい。



かれこれ10年近く履いているMARMOLADAのスリングバック:FG479。
ベジタブルタンニン鞣しのオイルがたっぷりと染み込んだバケッタレザーがいかに丈夫で近所のコンビニから表参道どころか新幹線や飛行機に乗ってアクティブな旅行にまで行ける革。
雨の日に履いた場合、もちろん踵から靴下に水は染み込んでくるけど、意外となんとかなる靴。そもそも雨の日はどんな靴履いてもパンツの裾は濡れてるしな、みたいな。
とはいえ、流石に10年履いたから新しいのが欲しいな、と思って作ったのが今回の赤いオーストリッチのスリングバック。
黒でも良かったんだけど、まあそういう実用的な部分はバケッタレザーで十分実感できたからなあ。
というわけで、欲しいのは実用性に加えたかった「履いていて楽しい」という気持ち。
それが、僕らにとってのMANHOLEだ。



さて、F.LLI Giacometti、MARMOLADAのスリングバック:FG479。
甲革はMANHOLEエクスクルーシブレザー:赤いオーストリッチ。
赤いカーフを使い切った頃、ちょうどオーストリッチの良さを感じ始めた頃。
「そうか、難しいことを考えずに革作ってもらえばいいのか」と、思いついた。
別に「この店にしかないもの」に拘るつもりはないけれど、この革はMANHOLEにふさわしい。
そう、僕はMANHOLEに。いや、僕と中台らしいものを作りたかった。
(すぐに息切れするけど)どこかしら、何かしらに熱中したい気持ちを未だに抱えながら、僕らは生きている。



Forma: MARMOLADA Q, NORVEGESE with VIBRAM, STRUZZO FLAME RED
¥228,800-(tax included)
革の色名には「FLAME RED」と書いてある。
今日の晴れ間の刺すような日差しに夏を感じた。
そろそろ、熱く燃えたかったんだ。
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河上 尚哉
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