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軽やかに


MANHOLEオープン当初から遊び続けているベルベットという素材。
「次は何作ろうかな」なんて考えていたところ、ネルシャツが今の日本の気候にしっくりくる、というのを感じたタイミングで「そうか、ネルシャツが起毛コットンっていうことは、起毛パイルのコットンベルベットをネル生地に置き換えてみるか」と思いつきました。

ただ、「コットンのベルベット」とリクエストを出すと大体送られてくるのは、ベルベットではなくどちらかというとモールスキン。悪くないけどコレじゃないんだよなあ。
で、去年の秋。ネルシャツついでに「モールスキンじゃなくてベルベットなコットン生地ってないですかね」とイタリアのシャツ屋さんにリクエストを出したところ、ちゃんとベルベットなコットンの起毛パイルを送ってきてくれました。
流石世界の高級縫製工場、探せばなんでもあるなー。

「ネルシャツと合わせて2月末納品だと嬉しいですね〜。いけます?」と聞いてみたところ「行ける」とのこと。というわけで、作ることにしました。
形は以前から気に入って作り続けているMANHOLEオリジナルのタブカラーシャツ。


2月中頃。連絡が来ない。まあ、まだ寒いしな。オッケーオッケー。
3月中頃。「注文が立て込んでいて遅れる」と連絡がある。うーん、まあギリOKかな。
4月中頃。「出荷します!」と連絡が来る。うーん、送ってもらってももう暑いから無理だろうな。
流石ナポリって感じですが、僕の心は以前彼らにしっかりと鍛えられたので納品が遅れてすぐに販売が出来ないくらいではめげない。夏が暑くなる、ということは冬は寒くなる。寒くなるまでしばらく寝かせればOK。

“MANHOLE” – Waters tab – [Snap tab-collar shirt]
Color:BLACK / Size: 40, 42, 44 ¥46,200-(tax included)




その時気に入っているカットソーやスウェットやニット、その時気に入っているパンツに足を通し、その時近くにある靴下を穿いて、その時気に入っている靴を履いて、このシャツを羽織ればOK。

このシャツにおける「ネクタイを立体的に見せるためのタブ」は、ただのアクセサリー。
このシャツにおける比翼仕立ては「釦」というシャツらしい記号を隠すための存在。
このシャツにおけるスナップ釦は「ベルベットやドレスシャツに付随するエレガント」が持つ気恥ずかしさをプチプチっと殺すための機能を持つ。

2026年。
「本来こうだった」とされるドレッシーな素材やそれに付随するディテールには、現在進行形で形骸化されながら尚、存在する意義があると僕らは思っている。
つまり、形骸化されて尚、それ自体が持つ視覚的な魅力は実在するということだ。





意味のある素材や意味のあるディテール。
それ自体が担ってきた役割には敬意を払いつつ「それはそれ」と、重たい思い込みだけ脱ぎ捨てて今、軽やかにベルベット。


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河上 尚哉

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