ぼくらはいつもぺらぺら #2
こんにちは。
ぺらぺらの河上です。
本日紹介するのはCLASSのぺらぺらのコート。
先シーズンのベストに引き続き、細番手のリサイクルナイロン糸を使用し高密度に織り上げたナイロン素材を使用したコート:SHELTERです。
1940年代のイギリス軍のガスケープコートをモチーフにしたアイテム:SHELTER。
バッグを背負ったまま着用できる大きなマチと、ダウンパックを装着できる機能が特徴です。
一見どんな格好にも羽織れる「便利なコート」。
ですが、全然便利ではありません。
人によってはこの丈のコートでフロントのポケットが無いのが我慢出来なかったりすると思うし、そもそも立体感のあるナイロンの生地により立体的に形付けられる背面のマチが邪魔だと感じる人も多いでしょう。
何かが足りていないし、何かが多い気すらする。
こういうなんらかの機能に特化したミリタリーアイテムをサンプルにすると利便性を高めるような修正をされることが多いのです。
CLASSの場合、そういった誰もが考え付くような気の利いたディテールを付け足すようなデザインを、いつもわざとしないように感じます。
シャツ地のような薄手のコットンが使用されたイギリス軍の1940年代のガスケープコート。
身幅も大きく、背面のマチの面積も大きいので、実際に着用すると体に沿うように縦に落ちるシルエットですが、CLASSのSHELTERは高密度に織られたリサイクルナイロンが立体的なシルエットを作り出します。
元々スナップ釦だったフロントの前合わせをベルクロに。
元々一つしか付いてない小さな片ポケットを何故かもう一つ増やしてます。
リサイクルナイロンの生地をそのまま二重の無双仕立てにしているので、生地と生地の間にダウンパックを詰め込むことができるよう、内部にもベルクロが付属しています。
あればいいものが無い、無くていいものがあるコート。
だからこそ、自分が好きな部分を探す事のできる洋服なんだと感じます。
これは僕らが良く着ているCLASSのぺらぺらのコート。
中台の物は4年前くらいの春夏のモデル。
これはどちらかというと最初から気が利いた洋服でした。
スノーパーカーのディテールをそのままに、ウルトラスウェードに置き換えたもの。
ただ、ウルトラスエードに対する認知度が上がった今でこそ「便利な洋服だなあ。」と感じる事が出来ますが、当時は「春夏にウルトラスエードって。。。」と思う方が多かったように思います。
僕の物は4年前くらいの秋冬のモデル。
どう考えても暖かくないし、片側に大きなポケットが付いているとはいえ、最初は不便でした。
でも今はそんな事全然気にしていません。
「利便性」や「季節性」という洋服を買う上でどうしてもフックになってしまうポイントなんて、一度気に入って着続ける事が出来れば簡単にいくらでも乗り越える事ができるのです。
問題は「利便性」や「季節性」を乗り越える事が出来るような何かがある洋服かどうか。
自分で何かを詰め込む余地が残されているかどうか。
そんなCLASSのぺらぺらのコートですが、「洋服を通して何かを伝えたい。自分の作るものに共感できる人だけ、好きな人だけ、面白いと思う人だけ手にとってもらえれば良い。」なんていう意思を強く感じます。
誰にでも似合うように、手に取れるように内容を詰め込められた物よりも、こういった特定の誰かをめがけて作られた/あるいは誰に向けても作られなかった事により何かが欠けている、何かが足りない物の方がよっぽど胸を打たれる瞬間があるのです。
見た目も口先もぺらぺら。頭の中身はスカスカな僕たちだけど、誰かに何かを伝えたいからお店をやっています。
だからこそ、誰かに売り方まで完璧にお膳立てされた何かよりも、どこか何かが欠けている洋服くらいの方が「良いなあ。」と、思いながら紹介できるのだと感じます。
既に詰め込められた物を捨てる作業よりも、足りない何かを考えながら補っていく方が、よっぽど楽だし楽しいんじゃないでしょうか。
河上 尚哉