今、どこにいるか。
「河上、見てみ。この靴、こんな返るんだよ。」
そう言って、F.LLI Giacometti代理店であるWHEELIEの秋山さんが上の写真のように机に靴を押し当てて見せてくれた事がある。
この返りの良さは、ボロネーゼ製法で作られたFG417ならではの特徴のようだ。
他にもこの靴について色々と教えてくれたけど、呪文を聞いたような儚い記憶しか残っていない。
確か2017S/S シーズンの展示会を行なっていた時期。
2016年の夏。
その頃、僕はソールにボリュームのある、堅牢な印象を覚える靴が好きだった気がする。
そのせいか、「返りが良い」というワードにも、いまいちピンと来ない。
ポインテッドトゥに、ドレス的なイメージしか頭に浮かんでこない。
当時働いていた職場の洋服と組み合わせることも、あまり想像が出来なかった。
そして今、2021年の春。
僕は少なくとも、5年前よりも色々な形の革靴を履くようになった。
事務所に行くたびに秋山さんが教えてくれる呪文も、ようやく脳内で日本語に変換できるようになってきた気がする。
ポインテッドトゥに、ドレス以外のイメージを持つ事ができるようになった。
パッと目に留まった靴が、売り場に並ぶ洋服に合うか / 合わないかも。
そこまで今は重要ではない。
周りの人たちも、お客さんも、僕の頭の中にない「かっこいいイメージ」を持っている。
まずは何も伝えずにそれに委ねてみてもいいのかもしれない。
それと同時にMANHOLEに並ぶ洋服で、周りの人たちと、お客さんの頭の中にない新しいイメージを一緒に考える事が出来たら、僕は嬉しい。
と、いうわけでFG417 :ボロネーゼ製法で作られた、ヒールカウンターのないスリッポン。
今期MANHOLEで用意したのは、甲革にSCIARADA社の銀付きスエード:リバースドカーフを採用したもの。
履き方は簡単。
踵を潰して足入れして、指で踵を起こして靴内に足を収めるだけ。
ボロネーゼ製法と3mm厚のウェルトが生み出す屈曲性。
高いトップライン/ヒールカウンターの無い踵が足を包みこんでくれる。
普段41〜41Hを彷徨っている僕。
今回、42を買う事にしました。
多少大きくても踵が付いてきてくれる。
サイズが大きい靴を履くときに気になる、履き口と足に生じる隙間もそこまで気にならない。
最近、パンツのシルエットがある程度出尽くした感がある。
ので、プリーツがあろうがなかろうが、ワタリが細かろうが太かろうが、裾幅が広かろうが狭かろうが、割と何も考えずに目に留まったパンツを仕入れました。
今シーズンは古着も含めるとたくさんのシルエットのパンツが並ぶ予定。
次、どんなパンツが穿きたいか、自分でもわからない。
そんな状態の僕が「履きたいな。」と思って仕入れた靴です。
底はしなやか / 芯は無い。
だけど、しっかりと個性はそこにある。
自分達でもよくわからなくなるほど曖昧で気分任せの毎日を送る僕らですが、いつ、どの位置にいても、ついてきてくれそうな靴のように感じます。
MANHOLE official instagram
河上 尚哉
〒107-0062
東京都港区南青山4-1-3 セントラル青山003号室
M : info@manhole-store.com
T : 03 4283 8892