CLASS ” SPIDER LILY “
CLASSのウルトラスエードショートコート:SPIDER LILY。
固い袖、シェイプの効いた細い身頃、まるで甲冑のような洋服。
組み合わせると、ピーコート。
中台は腕を袖に通した際に「河上、見て〜。この袖、着ると腕が真っ直ぐになる!」と、喜んでいた。
分厚いウルトラスエードを裏面使い、各所の縫製は縫い代のないフラットシーマ。
野趣溢れる、迫力のある生地がかっこいいが、表情のムラが強いせいでこのウルトラスエードは通常市場には流通しないものらしい。色、黒く見えるけど実はネイビー。
これは、ともすれば一昨日や昨日僕らが紹介した「無駄な洋服」になり得る洋服だと思う。
かっこいいけど、持ち主の寛容さと閃きが必要な洋服。
ただ、一度どこかに魅力を感じさえすれば。手元に残していれば。
そのひらめきの瞬間は確実に、訪れる。
中台の私物:ラフシモンズの半袖ニット。
意外と暖かいらしく、ただ重ねれば良いわけではない足りない洋服。
例えば、これで大丈夫。
柔らかいニットと柔らかなスウェットパンツ。
固い袖と堅い靴。
足りない袖に、しかない袖。
飽きっぽい中台には珍しく、暫く着ているビンテージブルゾン。
見慣れた洋服に、見慣れない袖。
組み合わせれば、新しい洋服。
中台は相変わらず「河上、見て〜。やっぱり腕がまっすぐになる!」と喜んでいる。
そして、腕を曲げて「曲がる!」と言っている。
楽しそうでよかった。
僕はベストをベストとして使ってみる。
体に合わせて生地が動かないせいか、洋服自体のシェイプが強調されてかっこいい。
固い着心地とは裏腹に、上からジャケットを羽織っても不思議と邪魔にはならない。
ウルトラスエードは風を止めてくれる。
暑がりの僕ならば、ニットを着てこのベストを挟み、ツイードのジャケットを上から羽織ってマフラーでも巻けば。
真冬でもコートを羽織らずに過ごせるかもしれない。
こんな風に「自分が使うならば。」を、想像出来れば大丈夫。
想像通りに行かなくても、いずれ思いつくから大丈夫。
ジャケットの上からベストを羽織ってみる。
柔らかな光沢のベロアと固いベスト。
光に当たると青く光るネイビーと、光に当たっても黒く見えるネイビー。
見慣れたジャケットに、見慣れないベスト。
組み合わせれば、新しい洋服。
アームホールは太いので、コートの上に着ても大丈夫。
コートの下に着ても大丈夫。
もちろん、そもそも着なくても大丈夫。
固いツイードに固いウルトラスエード。
見慣れたコートに見慣れないベスト。
組み合わせれば、新しい洋服。
さて、CLASSのSPIDER LILY。
納品されたのは8月頃。
あの気温下で着ることはよっぽどの情熱がない限り、出来ない。
残念ながら、その情熱は僕らにとってあまり現実的ではない。
その為「これ、着ると腕がまっすぐになるんですよ。」と、気にするお客さんの気持ちを笑いで暫くはぐらかしていた。
僕らは無駄な買い物をし続けた結果、この袖と胴のどちらかは、あるいは袖と胴のどちらも「箪笥の肥やし」となり得る洋服の魅力を(僕らなりに)伝えることが出来る。
それでも人によっては自宅の洋服と組み合わせることを想像する時間は必要かもしれない。
だけど、買ってすぐに着ることの出来る今時期から、とりあえずただ着てみてはいかがだろうか。
買ってしばらく経った後、着方がどうしてもわからなければ。
暇な僕らと一緒に考え閃く時間を共有するのも、きっと素敵な時間になるだろう。
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河上 尚哉
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