2021/11




昔から「〜しなければならない。」というのが苦手、というか違和感しか覚えなかった僕らにとって、今はなんとなく生きやすい。

MANHOLEというお店を持つことにより。
何も考えず誰かの思惑に従うだけではなく、「従う/従わない」を含めた先と後を考え、選び、自分から動けるようになったのだ。

先生から名前を呼ばれたら「手を挙げて元気に返事をしなければならない。」
起立、着席、礼と言われたら「起立、着席、礼をしなければならない。」
友達は「作らなければならない。」
将来に向けて目標を「設定しなければならない。」
絶対に目標に向かって「頑張らなければならない。」
この日までにこれを「提出しなければならない。」
彼女の誕生日は「祝わなければならない。」
レストランで食事中、突如照明が消え、他所のテーブルでバースデーソングが流れ始めたら「祝福しなければならない。」
レストランで食事中、突如照明が消え、自分のテーブルにバースデープレートを持ってこられたら「周りから祝福されなければならない。」
何かに備えて「貯蓄をしなければならない。」
お客さんにはいらっしゃいませと「言わなければならない。」
上司や先輩の言うことは「聞かなければならない。」
会社の規則には「従わなければならない。」
会社の飲み会には絶対に「参加しなければならない。」
上司には酒を「注がなければならない。」
色んな人との人脈を「築き上げなければならない。」
この冬は絶対にこれを「売らなければならない。」
この場所にはこの洋服を絶対に「着ていかなければならない。」
こういうバランスにはこういうバランスを「組まなければならない。」
この色にはこの色を「合わせなければならない。」
お店は長く「続けなければならない。」

「しなければならない。」という大人たちからの強制は、本来周りと生きやすい社会を過ごす為の優しさだったのだろう。
道を行ったり来たりしてる内に、優しさが薄まり形を変えてしまう。

僕らは大人と呼ばれる年齢になって暫く経ち、気付いたらおじさんになっていた。
おじさんの僕らにとって今、日々目の前に浮かび上がるほとんど全ての選択肢は「しなければならない」ではなく「した方がよいけど、本人さえ気にしなければしなくてもいい。」ものである。
更に、わざわざ他人を不快にする必要はないが、目の前の人に喜んでもらうために、自分が気分良く毎日を生きるために。
僕らは「しなければならない」方法以外に「した方が良い」別の方法を考え選び実行する権利を持っている。

本当はおじさんになるもっと前、人間として生まれた瞬間にその権利に気付いておくべきだったのだろうけど、今更そんなことを言ってもしょうがない。

ちなみに、上記の簡単に思い浮かんだ「しなければならない」を羅列している最中。
僕も中台も項目の半分以上に対して素直に従ったことが無いというか出来なかったことに気付き「なんて生きづらい人生を送ってきたのだろうか。」と、うなだれている。
別にいいけど。今が楽しいからどっちでもいい。





先に紹介したFG208 / FG577とは一見違う毛色のブーツを仕入れてみた。

木型はViora TR。
甲革フレンチカーフ / ハンドソーングッドイヤーウェルテッド / レザーソール / ポインテッドトゥ。
脱ぎ履きしやすい3アイレットのチャッカブーツ。

古着も含めると色んなシルエットのパンツが並ぶMANHOLE。
更に、今はこれといってパンツのトレンドがない。
パンツのトレンドが無い = 靴のトレンドもない。

実は今、履きたい靴が履きたいように履ける良い時期です。
本当に好きだったら、そんなに変わらないんだろうけれども。





ご覧の通り、ズルズルした長さの裾幅の広いパンツも。
他人から譲り受けそのままのレングスで履いている、暫く時代から取り残されたノープリーツのスリムテーパードのパンツと合わせても、今の気分になんとなくマッチする。
レングス長め、裾幅細めのスリムストレート。
すっきりしたレングスで裾幅の広いストレートシルエットのパンツなんかも想像がしやすい。

つま先の反り上がった靴以上に見向きもされなかったポインテッドトゥの靴。
今なら、改めて受け入れることが出来るはず。



F.LLI Giacometti
” FG428 Viora TR ” – Chukka Boots –
[ Chateaubriand Nero ]
¥110,000-(tax included)




つま先が細かろうが丸かろうが四角かろうが。
ソールがゴムだろうがレザーだろうが薄かろうが厚かろうが。
色が黒だろうが茶だろうが変な色だろうが変な革だろうが。
僕らは「どれでもいいし、どれも良い。」と言えるようになりたい。

幸いなことに、装うこと自体も今、更に。
「〜しなければならない。」ものでなく「〜した方が良い。」というものに変化している。

その変化に身を委ねている内に(例えば)冒頭の「かつて嫌だったこと」は「別に悪くはないもの」くらいには変わり、いずれ本来の優しさを取り戻すのではないだろうか。





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河上 尚哉

〒107-0062
東京都港区南青山4-1-3 セントラル青山003号室

M : info@manhole-store.com
T : 03 4283 8892





こんにちは。
MANHOLEの中台です。


ちょうど一年前に河上に勧められて買ったF.LLI Giacomettiのブーツ。
色も形も含め、その当時欲しかった気分では全くなかったんだけど、なんとなく受け入れて買ってみたモデル。






河上が確かコロラート仕上げのカーフって言っていた気がする。
手入れもせず履き続けた結果、元々の色ムラが増して、より雰囲気が出てきた。
(たまには手入れもしないとね…。)

思いのほか僕の適当な格好にハマり、この一年で最も多く履いた靴になった。


自分のイメージからはみ出たモノ。
少し角度を変えたり、自分に変化を促してみれば、面白いくらいに馴染んでくることもある。
僕らはその体験がしたいがために、新しいことやものにチャレンジすることをやめられないのかもしれない。


F.LLI Giacometti
” FG577 Cristian”
[ Marokid Nero ] 
¥137,500-(tax included)




今回河上が仕入れたのは、今まで目にも留まらなかったトゥスプリングの大きい靴。
冒頭で紹介したブーツと同じ木型、仕様違いらしい。

河上は「つま先の反り上がった靴、なんだか理由なく避けていたけど、今かっこいいと思えたから良いと思うんだよなあ。」と、言っていた。

確かにかっこいい。






ソールはSt.Moritz。
ビブラムより強そう。
ボリュームがあるので少し背が伸びます。
雪もいけます。行かないけどいける。

甲革はゴートレザー、ノルヴェジェーゼ製法。
見た目通りの堅牢な靴。

これで雨にも雪にも負けないかっこいい人になれます。






「少し気持ちが離れてるテーパードパンツとか、改めて穿こうと思える気がするんだよなあ。」と、言う河上。
たしかに、合わせたテーパードパンツが新鮮に感じる。

ここ最近は細身の靴を履くことが多かったけど、このボリュームも久しぶりで楽しい。
いつものパンツも、靴を変えたら全く違う顔になるだろう。


慣れたバランスを過ぎると、そのうち飽きがくる。
飽きてもいい。それはごく自然なことだと思う。

ただ、一度飽きたものやことに対して、ネガティブな感覚を抱く必要はない。
いろんなバランスを自分の中でくるくる回していけば、可能性はいつまでも広がり続ける。
気がする。今は。多分。きっと。



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中台 竜郎

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6,7年前に買ったF.LLI Giacomettiのサイドゴアブーツ。
ボリューミーなブーツ木型:GIORDANO TR。
エラスティック下に接ぎを入れず一枚革を使用した作りが、頑強さの中に繊細さを感じさせてくれる。

甲革はゴートレザー。
思えばこの革を僕が好きなのは、このサイドゴアブーツの「道具としての便利さ」を体感したことがきっかけだった。

長い間気に入って履いていたし、当時のお客さんも気に入って履いてくれていたけど、何故かMANHOLEをオープンして以降約2,3年間、僕はこの靴を全然履いていない。
定期的に埃を落としてクリームを入れるだけの靴。





甲革がダメになったわけでも、ソール補修が必要なわけでも、どこかが傷んでいるわけでもない。
見る度に「かっこいい靴だなあ。」とは思うんだけど、履く気にならない。

これが何故なのかはなんとな〜くわかっていた。
僕らがMANHOLEをオープンして以降、お客さんに提案し続けていた裾幅の広いスラックスとは絶妙に合わない靴だったのである。

なんて。
合わない理由を考えることなんてあまり無いんだけど、なんとなく嫌なまま放置してもうそろそろ3年が経とうとしているので、なんで嫌だったのかを考えてみることにした。



MANHOLEオープン以降、定期的に紹介しているSADEのパンツ:PT-01。
僕はこのパンツに、この靴を合わせることに対して違和感を覚える。
どうにも落ち着かない。

足首が綺麗に見えるブーツの良さを、消すパンツ。
裾がふわふわと揺れる動きを、止めるブーツ。

ビブラム/ゴートレザー/丸っこいトゥ。
このパンツの生地を受け止めるのにも、全部強すぎる。




気分じゃないとはいえ、格好いい靴。道具としても優れている。
「なんだか気分に合わない。」という理由だけで放置するのも少し飽きた。

仕入れを繰り返す度に細くなっていくトゥにも限界はある。
だからこそ今、少しだけ気持ちから離れていたボリュームのある靴に一度戻ってみてもいいのかもしれない。
裾幅の広いパンツも、MANHOLEのお客さんにはなんとなく定着した気がするし、幸い今パンツのシルエットにはトレンドらしいトレンドも無い。

かれこれ長いことしていない、ロールアップという選択。
しばらくシングルに直していた裾を、ダブルに。
この靴の良さを改めて受け入れることで、裾を引きずりそうになりながら穿いていたパンツの丈を直そうという気持ちにもなるだろうし、しばらく穿いていないパンツを引き摺り出して穿くきっかけにもなるかもしれない。





と、いうわけで。
今年から少しずつパンツのシルエットを変えてみている。
変えてみている、というか、増やしてみている。
気分に合わなかった靴も、自分の気持ちの方向を少しだけ変えるだけで、良く見えるようになるから不思議なものだ。
足元から変わるバランスは、徐々に上に伝播して変化していく。

僕らはきっと、こういうどこから湧いてくるかわからないなんとなくの思いつきに「なんか嫌だなあ。」という気持ちを抱くことなく日々を送るために、たくさんの洋服を持っているのだろう。





今回仕入れたこの靴もまた。
「なんとなく、思いつきで、ノリで」作った靴だ。
正直届くまでドキドキしてたけど、箱を開いたら思った以上にかっこよくて安心した。

毛足の長い銀付きスエードとクロコダイルのキャップトゥ。
質感の全く違う黒がスイッチするサイドゴアブーツ。



F.LLI Giacometti
” FG208 Giordano/TR” – SIDE GORE BOOTS –
[Velvina Nero + Fianco Cocco]
¥170,500-(tax included)




自分の中で少しだけ飽きているバランスの靴を。
「道具として便利だから」という理由でリピートして、単純に便利な物として紹介するのが嫌だった僕にとって、今回仕入れたこのサイドゴアブーツは(良い意味で)チャラい仕様変更になった気がする。

おかげで、既に飽きた物に対する気持ちが少しだけ前を向く。
人間の「飽き」という感情は、少し時間を置いて自分が変化するのを待つことで、大体が無かったことになるのだろう。

自分の変化なんて、多くは他人から見たらひどく些細な違いだ。
だからこそ、MANHOLEのお客さんにはその繊細さを楽しんで欲しいと思う。




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河上 尚哉

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