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透き通る、パンツ

曇天で肌寒い日が多かった、ここ最近の東京。一転して、今日は抜けるような青空。気持ちいいな。気分が軽くなる。

そんな日に、僕の目についたのは軽快な肌触りと清涼感あふれる素材のパンツ。

こんにちは、鶴田です。



軽快すぎて、もう、ほとんど透けちゃってる。


” CLASS “
– CCCS19UNI A –
Color : BEIGE
¥64,900- (tax included)



CLASSから届いたラミー(RAMIE:苧麻)100%のパンツ。苧麻(ちょま)は麻の一種だが、リネンよりもシワ感が強い繊維。



ウエスマン付き/ジップフライのウエスト周りだが、後ろ半分にはゴムが入っているので所謂リラックスパンツの履き心地。実際に穿くと、かなりコンフォートな着用感。素材も、軽い軽い。ひんやり、さらっとした清涼感。細かいストライプ柄がそれらを視覚的にも加速させている。



苧麻が縮れて、無数の細かいシボが刻まれている。この生地は「小千谷ちぢみ」と呼ばれるもので、撚りが強い緯糸で織った苧麻製の布を湯もみすることでシボ感を出した、新潟県小千谷市周辺の伝統的な織物らしい。国の重要無形文化財にも指定されているそうだ。

いわゆる、縮緬(ちりめん)の一種にあたるのか。凹凸がくっきりとしているので、肌との接地面が少なくて非常に涼しく、いかにも夏を代表する素材だ。

シボ感のある夏素材といえば、代表的なものにシアサッカーが挙げられる。アイビーの文脈でも頻出する伝統的なコットン素材だが、ジャケットやバミューダショーツ、半袖のボタンダウンシャツなどの洋物アイテムによく見られるシアサッカーに対し、小千谷ちぢみは着物に使われてきた「和物」である。

フルレングスの洋物パンツに使われることで小千谷ちぢみの新たな可能性を感じさせる、実にCLASSらしいアイテム。



リネンのジャケットやタンクトップと組み合わせた、中台。いかにも軽い見た目のパンツだが、パイソンのシューズと相性バッチリだったりして。洋服屋を長く続けていても、ちぢみのパンツを穿くのは初めて。勿論、コーディネートする洋服を変えるたびに、素材合わせの新たな発見がありそう。

鶴田も、穿いてみた。



木製のベストと小千谷ちぢみのパンツ。

僕は24年間も洋服屋を続けているが、この組み合わせは初体験。普通は着ないか…木でできた洋服も、ラミーで織られたちりめんも。この歳になって尚、新しい発見があるなんて…。ファッションは底が知れない。



圧倒的な軽さと清涼感を体験できる小千谷ちぢみのパンツだが、それ以上に僕らをドキッとさせるのが、この「透け感」。穿いた状態でポケットのスレキが透けて見えるくらい、シースルーなこのパンツ。光の当たり具合によっては脚の形も透けるし、下着も透ける。

堀切氏が作る洋服には、いつも安心感がない。過去の何かとまるっきり同じものは作らないし、簡単に購入して簡単に手放せるほど一筋縄でいかないアイテムが多い。着る瞬間からドキドキが始まる。勿論、いい意味で。



僕はこの歳になるまで、小千谷ちぢみの洋服を着たことがなかったが、それ以上に、ここまで透けるパンツもまた、穿いたことがなかった。

人間は歳を取ると、季節の移り変わりを早く感じる。光陰矢の如し。「30代は過ぎ去るのが早いよ~」なんて。それは子供のころと違って「初めて体験することが少なくなる」からだと言う。洋服だって、着たことがあるアイテム(素材・形・色)ばかりを繰り返し着ていると、コーディネート法なんて着る前から見えている。

CLASSの洋服は過去に敬意を払いつつも、そこからまるで初雪のような真っ白さで僕らを貫いてくるアイテムが多い。会うたびに感じる堀切氏の無邪気なまなざしからも同質のものを感じ取ることができる。

「透ける洋服は着づらい?」

「でも、そこから始めてみることがあってもいいんじゃない?」かって。

農民の冬の副業として作られていた小千谷ちぢみ。織りあげられた反物は、地を白くするために雪の上でさらされて完成するという。この雪ざらしは、小千谷に春を運ぶ風物詩になっているそうだ。縮んだ後、真っ白になって完成する。そんなエピソードも含めて、このパンツに魅力を感じてしまうのは、果たして僕だけだろうか。

先入観の濁りを取り払い、透き通るような眼を再び開くために、ファッションが機能する瞬間はまだまだ残されているのだ。




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