愚か者の服(Fool’s Jacket)
外苑前の朝。今日は小雨模様でしたが、僕がMANHOLEに着くころにはすっかり上がっていました。雨が上がったそのあとにはひんやりとした冷気が地面にしっかりと張り付いていて、あぁ、ようやく冬っぽくなってきたな、と嬉しく思いました。僕がMANHOLEで働き始めたのは2021年の12月だったので、この街で迎える冬は4度目ということになります。
こんにちは、鶴田です。

今日、僕が紹介するのはCLASSのブルゾン「CCEA12UNI B」です。パっと見た感じで、何となくこの洋服の作りというか、概要は分かりそうな感じもしますね。

¥188,100- (tax included)
ご覧のとおり、裏返っていたり重なっていたりします。勿論、「裏返っている」と感じるのはストライプ柄のキュプラが「通常は袖の裏地に使われる生地だよね」ということを知っている人限定の話にはなってしまいますが。まぁ、でもそんなこと知らなくても何となく分かりますよね。雰囲気で。裏返っていたり、重なっていたりするんだろうな。って。
で、この「なんとなく分かる」という感覚こそがトラップなのですよ。


実際はどうなっているのかというと、実際にこの洋服は裏返っていたり重なっていたりするんです。



この連続写真を見ると、CLASSの「CCEA12UNI B」がどういう構造になっているのかは、何となく分かりますよね。
だから、いちいち説明しません。「この部分を取り外すことができます」とか「この位置で裏地と表地が切り替えられています」とか、そういうことは。
だって、パっと見れば何となく分かりますもんね?




で、裏返っていたり重なっていたり取り外すことができたりする、ってことはどういうことか分かりますよね?裏返しをさらに裏返せば裏表逆の逆でも着ることができるんだろうな、ってことも。
だから、いちいち説明しません。





でも、僕は昔からファッションのことについて考えるとき、「分かる」という感覚をどこかで拒否し続けてきたような気がします。だって、分かっちゃったら終わりってことですもんね?分かる、つまりゴールに到達するってことは、ある意味で思考ストップ状態になってしまうということ。(隠しキャラや隠れアイテムも全部取って)完璧にクリアしたRPGで遊ぶことが二度とないように。



「分かる」
CLASSの「CCEA12UNI B」のように複雑な構造をした洋服に限らず、見ただけですべてが分かることなんてこと、世の中にはそうそうない。実際に「分かる」と「分かる(気がする)」「分かった(気になる)」の差は大きいけれど、それは意外と忘れられやすい。
MANHOLEというショップには創業時から「どこにでもあるもの、全てに繋がるもの。だけど、中がどうなっているのか誰にも分からないもの」という言葉が添えられているが、僕はこの言葉が好きだ。「セレクトショップ」とか「CLASS」とか「堀切道之」という言葉を聞いて、ああ、MANHOLEね。インスタ見てるよ、ブログ読んでるよ。これは勿論、嬉しいことなんだけど、インスタやブログでMANHOLEのすべてが分かるわけではない。
MANHOLEで働き始める前から、僕は河上のこともMANHOLEで取り扱っているブランドのこともある程度知っているつもりだった。想像していたにもかかわらず、中に入ってから見るMANHOLEの景色は僕がイメージしていたものと異なっていた。ちゃんと違っていた。ああ、そうか、河上と中台が作りたいのはこんな店だったのか、と思った。それは、僕が大手セレクトショップの中から見ていたものとは明らかに違う景色だった。
そういった意味で、MANHOLEは愚か者のためお店だ。CLASSは愚か者のための洋服だ。



「分かる」ことを拒否している。RPGをクリアすることを拒んでいる。それは、退屈を拒否していると言い換えてもいい。MANHOLEに並んでいる洋服たちは(河上の言を借りるならば)「毎日を楽しく過ごすための道具」みたいなものだ。徹底して退屈を嫌い、お客さんと一緒に楽しい時間を過ごすことを重視したMANHOLEの設えは、やはり「中がどうなっているのか、誰にも分からないもの」だった。
河上は愚かだ。
中台は愚かだ。
しゅうやは愚かだ。
こうしくんは愚かだ。
ゆうとは愚かだ。
「分かる」ことを積み上げて賢者になるよりも、「分からない」を集めて愚者になる道を選んでいる。
そして、おそらく堀切さんも愚かだ。まず、堀切さん自身、この「CCEA12UNI B」のことを分かっているとは思えない。作った人にも分からない。ブログを読んでも分からない。見たことがある人にも分からない。着てみても分からない。そんな洋服を彼は作りたいんだと思う。そういう意味で、このCLASSの洋服はMANHOLEにぴったりだと思う。数年前に買ったCLASSの洋服を着るたびに思う。何度も着用して分かった気になっていたけれど、この人の作る洋服はやっぱり分からない、と。「デタッチャブル」「インサイドアウト」「ジップ」「パンチング」「シースルー」…そんな言葉の羅列で洋服のことが分かるんだったら、僕はとっくに賢者だ。
しかし、鶴田は愚かだ。

(さすがに愚か者扱いすることはできないけれど、しかし、少なくとも)MANHOLEにやってくるお客さんたちは、みんな退屈を拒んでいると思う。だからこそ、僕らも一緒になって「分からないもの」を楽しみたい。分かった気になって人生を退屈に過ごすよりも、分からない人生を楽しく生きてみたい。終わらないRPG。僕はこの店が好きだ。
外苑前の朝。この街で迎える冬は4度目だったけれど、その朝は1年前とも2年前とも3年前とも違う朝だった。先週も先々週も店頭で見ていたはずの「CCEA12UNI B」は、今日も相変わらず「どんな洋服なのかイマイチ分からない」顔をしていた。
そして、分からないからこそ僕らはきっと来年も楽しむことができる。
中がどうなっているのか誰にも分からない穴蔵の中で出会った全ての人に感謝を込めて。4度目の冬に。
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鶴田 啓
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