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MANHOLE [made in Italy] -Tie tricot-

“MANHOLE” [made in Italy]
– Tie tricot – Color:BLACK Size:FREE
¥20,900-(tax included)


こんにちは。河上です。
そういえば、ネクタイを作りました。写真は撮ってあったのにバタバタしていて紹介するのを忘れていました。
イタリア製のシルクニットタイ。ぎゅっと詰まっています。締める時もギュッと鳴ります。
で、色数はめちゃくちゃあったのですが、選ぶのがめんどくさかったし選ぶのもめんどくさいので潔く黒一色。Marsの件が落ち着いたら、色数を増やそうかなあ。

大剣は丸みを帯びた三角、小剣はスクエア。締め心地と同じく弛緩した緊張感が魅力だと思います。
冠婚葬祭にも、ビジネスにも向かない「締めたいから締める」という、必要じゃない人に必要な感じ。
それが、MANHOLEのニットタイ。とても気に入っている。

そういえば、悠人の友人の匠(しょう)がMANHOLEにアルバイトで入ってくれました。
別に全部出来なくてもいいから、これだけは誰にも負けないっていう所を見せてほしいので匠に無理やりバトンタッチ。飯田 匠です。みなさん、彼をどうぞよろしくお願いします。



サイドボードの表面を半ば食い入る形で眺めている。
前屈みになり、T.Yがあの曲で唄った願いもとい申し出が見事成就してもなお、どういうわけか彼が四年間それを継続した、そういう遠点を簡単に想って頂ければ良いような長さの私の髪はサイドボードの天面にとっくに舞い降りてきても良い時節ではある。
ところがどっこい、待てど暮らせどこの結果が現れてこないから、
「これが天変地異なのだろうな」
と胸中で呟いた。
その時代わりに降りて来たのは自分の髪からヘアゴムを外すというアイデア。
これは妙案だろう、そう確信して先に取り掛かるべきことに取り掛かることにした。

検問官「一個めはrenomaのネクタイ、二個めはわかんないけど多分ネクタイ、三個めは…黒柿?黒柿か…。(顔を離して髪を解く。)あれ?二個めがネクタイだって、どうして思えたのだ。三個めも別のネクタイなら疑う余地はなかったのだけど、二個目のその、ゲシュタルトだけでは全く心許ない。やっぱり黒柿がまた別のネクタイだったらな〜。うん、見てみるか。」

 上記末尾にある操作、つまりさるネクタイらしきものをクオリアの中で展開することを私たちはいつまで経ってもできません。
いつまで経っても、というのは、畳まれた状態から展開されるまでの景色を目に焼き付けにマンホールを再訪する(※1)、その難儀なことの比喩であり、遅かれ早かれの将来で私たちがそれをできるようになることの不可能性の直示です。
そして極め付きは、私たちがこの現実に打ちひしがれるための時間は予め用意されていなかったという冷たな真実であります!

(※1)「景色」を目の当たりにした時点で「展開」はただちに、その要請を撤回される。思い出すことの必要性が失われる。

目を焼くような店内のスポットライトが陳列された商品、なかんずく二種類の黒いネクタイを直射している。
私はマンホールが作ったTie tricotにある網目の中の最奥の場所に、この啓蒙(=光)が遺憾無く行き届くこと見届ける検問官。

「どれどれ、該当するものは取り締まり、該当しないものは取り締まらないぞ〜」

私はいつものように、この屹立を崩すことなくサイドボードの上を眺め始めた。

「うんうん、届いている(気がする)。うんうん、大丈夫(だと思う)。」

「…?飛来した繊維が網目に乗ってTie tricotへの啓蒙を阻害しているではないか!ええい、止まりなさい、止まりなさ〜い!(…Tie tricotは止まってるけど…)」

半ば食い入る姿勢になって、当の網目に目を凝らす。
問題の繊維をつまもうとしたその時、その他の網目に拡散された周辺視野が一挙にトーンダウンした。
Vignette。
目測で厳しく見積もっても下がったのは僅か一、二トーン程度。
しかしながらこの数字は啓蒙を断ち切るのには十分すぎるものである。

「ただちに緊急啓蒙停止スイッチを押しに走らなければなるまい!」

そんな気が起きたのも束の間、かつて網の目だったものが周期的なグループを一斉に組むや否や私に、緊急啓蒙停止スイッチなど元より存在しないことを告げた。
グループになった無数の網の目が無数の、口を開いた翁と化した。
いずれの顔にも凹凸があり、少ないながら光が当たったり、光が当たらなかったりしている。
翁の鼻にあたった弱い光が私の目に、光は継起的に注ぎ込まれることを宣言した。


✴︎



洗練され、足すも引くも改良も改悪もとっくに引き受けられる状態にないもの。
漢字、図形、最新の地図。
これらを貫く一つの条件は「ゲシュタルト崩壊」を遊びとしていた幼年期の私がやっとの思いで探し出した唯一の事項です。
「グルグルバット」や「メリーゴーランド」「ジェットコースター」はロジェ・カイヨワが自著『遊びと人間』の中で定義した遊びの四つの分類のうち「イリンクス(眩暈)」に含まれる、というと「遊びとしてのゲシュタルト崩壊」がわかりやすいかもしれません。
任意のタイミングでたちまち発生し、その時の営みを妨げる現象として悪名高いゲシュタルト崩壊が好きでした。
私はそれが好きでしたので、自らそれを引き起こす必要があったのです。




Tie tricotはシルク100%のニットタイ。
ニットタイは大剣の先が平たい場合が殆どですが、Tie tricotは丸みを帯びた三角。
シルクは光を吸収せずステンレスのように煌めくことが特徴ですが、Tie tricotは網目によって吸収する。

河上さんの書いた文言を換言したに過ぎず、恐縮であります。
バトンタッチならぬトリコタッチを受けて河上さんの巻頭言!を一瞥した所感を言わせていただくなら
「なんかわかるな…」
というものでした。
Tie tricotには「ネクタイ」とするのに必要最低限の要素、常套のニットタイから脱する一手だけがあり、他に特記事項を持ちません。
このことは今更私たちが漢字の「飯」に対して何か思うところを持ち得ないことと等しいと思います。
私はここに、”絹”密なやり取りを見ました(0%Cotton!!)。
共時的なことはたちまち、あの遊びに関する「条件」が私の中に帰って来たことです。

「足すも引くも改良も改悪もとっくに引き受けられる状態にないもの」
と述した手前、画面の前のあなた自身のクオリアの中で、Tie tricotに対して任意に何かを付け加えてみることも良いでしょう。
普通のネクタイになったり、変わったネクタイになったり、ピカピカのネクタイになったり、
それはそれで楽しい操作でしょう!

もしもあなたのネクタイが元のTie tricotに戻らなくなってしまったり、ネクタイが何なのかわからなくなってしまったらマンホールに来てください。

そこにはTie tricotがあります。そして、私と遊びましょう!



何卒よろしくお願いいたします。



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