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MANHOLEのジャケット


「河上さん、CARUSOでARNYSの既製服を作っていた時期があるんですが、興味ありますか?」
「CARUSOもARNYSも僕らにとってあまりに唐突な気がするので、それ自体はあまり。。。あ、僕らの手元にあるすごくバランスの良いビスポークのARNYSをそのままCARUSOに作ってもらう、が可能であれば一度上がりを見てみたいです」

CARUSOとはイタリアのパルマ、ソラーニャにて1958年に創業した仕立て工房。
1990年代にはLANVINやDior、Francesco Smalto等の既製服作りも担っていたそうだ。
CARUSOのホームページにて公表されているのがそれなので、実際はもっと数多くのブランドが現在もこの工房の手を頼りにパルマに訪れているのだろう。

ARNYSは1933年にフランスのセーブル通りで創業したブランド。
「左岸のARNYS、右岸のHERMES」という文句をよく見かけるせいか、(HERMESでも注文服を扱っていた(いる?)とはいえ、我々庶民の感覚だと)このブランドの立ち位置がよくわからなくなるけれど、どちらかというとカンプスやスマルト、チフォネリなどのタイユールやアトリエに位置するブランドなのではないでしょうか。
セーブル通りってあのみんな行くHERMESがあるところじゃなかったっけ、と改めて地図を見てみたらあのみんな行くHERMESの真向かいがARNYS創業地でした。

誂えのARNYS。本店の工房で作っているからmade in FRANCEなんて当たり前。
店の住所しか記載のない、ものすごく気持ちの良いシンプルなタグ。
で「このタグがついているARNYSはビスポーク」なんて説明すら必要のないくらい、全ての工程を手で行ったことがわかる。
カーキ色のしなやかなキャバルリーツイル、山吹色のシルクの裏地。
実に品の良い、スポーティなジャケット。誂えるのが普通の人じゃないと辿り着かないような感じ。


「ジャケットを誂えるのが自分にとっての普通」みたいな貴族的ジャケット。
で、働いているお店で行われたビスポークブランドのトランクショーにて誂える、ならまだしも。
僕らのような小市民がARNYSで何度もジャケットを誂えるなんて出来るわけがないので、手元にあるこのジャケットはいうまでもなく「誰かのビスポーク」。誰かが誰かの為に誂えたもの、つまり自分と数値上の寸法が近いものを頑張って探してもどこかが合わない。
かといって大きいサイズを選んでも大きく着るために作られていないから、それもそれで難しい。
現行では手に入らない生地、現行では中々見ることの出来ない贅沢な作りなどを参考にすることは出来るけど、僕らはデザイナーでも工場の人でもなんでもなく「自分がかっこよく着ることが出来るものが欲しい」のだ。そんな僕らにとって、他人の為に作られたジャケットはやはり他人のジャケットに他ならない。

ちなみに、サイズの合わないビスポークのジャケットを手にすること自体はそんなに難しくない。
e-bayで調べれば出てくるし、テーラードの得意な古着屋さんは好きで用意しているだろう。
そうやって手にしたアルニスにチフォネリやカンプスのスーツ、トミーナッターにハンツマンやアンダーソンシェパードにキルガーやリチャードジェームスなど他人のビスポークが僕の家から溢れてMANHOLEの倉庫に無数に眠っている。

実は左右のラペル幅が異なる。意図したデザインでない限り誂えた洋服でしか目にしない左右差。


ただ、このARNYSは他人のジャケットなのに、「まあ他人のジャケットだしな」と諦めながら着る必要がないくらいバランスが良かった。サイズは既製服サイズで表すならば50くらいでしょうか。窮屈なジャケットが嫌いな怒肩の中台でも着られる、撫で肩の禅野くんでも着られる、僕でも着られる。で、その「着られる」が物理的な着られるではなく「かっこよく着ることが出来る」というのも良かった。

で、ARNYSの既製服はナポリのISAIAが担っていたというのをISAIAの人に教えてもらったことがあったのですが、CARUSOも声がかかっていたようです。
CARUSOが保管していた2006年頃の仕様書、ARNYSの名前がありました。
加えて現行のCARUSOのジャケットは(もちろんモデルにもよるだろうけど)肩周りがフィットしていてもシェイプがそんなに効いてなく蹴回しがふわふわしている印象。
「ジャケットというよりもサックコート」のようなビスポークのARNYSとの相性も良さそうだし、何より背景として非常に素直である。彼らの仕事はARNYSの80年の歴史の一部を確かに、作っていた。

“CARUSO” -MANHOLE-
Color:RED Size 50, 54 ¥198,000-(tax included)


というわけで、出来上がった真っ赤なジャケット。
バーガンディやくすんだ赤ではなく、真っ赤なウール生地。
「中台、サンプルの色何がいい?サンプルだから自分が本当に欲しい色がいいかな。で、それ見てダメだったら忘れよう」
「じゃあ、赤がいい。赤いジャケット、良いと思うんだよなあ」

ARNYSはもちろん素晴らしいブランドなんだろうけど、我々には関係がない。
「ARNYSだから全てが良い」と、僕たちは思わない。
CARUSOはもちろん素晴らしい工場なんだろうけど、我々には関係がない。
「CARUSOだから全てが良い」と、僕たちには思えない。

僕らは「良いもの」が欲しいわけでも「良いもの」をお客さんに渡したいわけではなく、「かっこいいもの」が欲しいし「かっこいいもの」をお客さんに渡したい。



僕らが良いと思ったものに僕らの感覚を乗せて、然るべき場所で作ってもらった。
このジャケットはARNYSやCARUSOといったどこか自分達との関係のなさを感じる他人のジャケットではなく、紛れもなくMANHOLEのジャケットなのだ。

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河上 尚哉

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