意志の通じ合った連帯
『サラリーマン金太郎』第9巻。
ナビリアという環境、風土、現場で、幾度も現実に直面しながら心折れず、再起を図り、与えられた仕事をやり遂げようとする大和建設:矢島金太郎と日本企業。
しかし、その気持ちを無下に突き放す国家通信省の本多部長。
その本多部長に対して、商社・東紅の弦本常務が放った言葉。
「意志の通じ合った連帯というのは男の喜びなんだ。あんたはその喜びを知らんようだね」
このセリフにある「意志の通じ合った連帯」という言葉を、僕は夢見て今日も働いている。
こんにちは、MANHOLEの河上です。

さて、サラリーマン金太郎があくまでもフィクションであることは置いておいて。
人間の暮らしを根本的な部分から支え、豊かにする為の仕事を生み出し実行する社会的インフラ企業と異なり日々の生活を送るにあたり全く必要のない贅沢な嗜好品をお届けする我々のような存在ですが、そんなみなさんの生活にぶら下がっている我々が理想とする仕事とは。
①自分が「良い」と感じた洋服をそのまま、あるいは自分の感覚を通して、より魅力的なものとして誰かに届けること、そして届けた後のことも考えること、考え続けること
②普通に生きる上では全く必要のないはずの我々をたよって開けづらい扉を開けてお店に入ってきてくださるお客様に出来る限りその時間を楽しんでもらうこと
③そして、初めて入ってきたその時よりも心地良い、気分良い、格好良い状態でお店を出て行ってもらうこと
もちろん経済活動をしている上で売上や利益といった部分は非常に重要な要素ではあるけれど、それは「届ける」「楽しんでもらう」「心地よい、気分良い、格好良い状態でお店を出て行ってもらう」という仕事の副産物。「お金は後から付いてくる」なんてよく聞く綺麗事すら本来必要なく、あくまでも仕事の過程で生まれる結果なのである、という気持ちは出来れば常に忘れたくない。
その為の日々の掃除、その為の商品整理、その為の在庫管理、その為の商品企画、その為の商品買付、その為のMD、その為のPR、その為の経理、その為の人事、その為のー挙げるのめんどくさくなってきた、その為の全て。全ては業務であり現場での接客に向けて存在する役割に過ぎない。
お店を彩る什器、業務効率を上げるためのパソコン、働く自分たちが居心地の良い環境作り、全ては「我々が理想とする仕事」を成し遂げる為である、という気持ちは出来れば常に忘れたくない。
なんの話かっていうと、今回のMANHOLE企画、ハイゲージカーディガンの話です。

と、いうわけでMANHOLEのイタリア製ハイゲージ企画第4弾。
3色のモックネックニット、5色のニットポロ、去年が黒で今年がピンクのクルーネックカーディガンに続いて企画したのはジップアップカーディガン。
参考にしたのはピタピタサイズの70-80年代名作トラックジャケット。
雰囲気もサイズ感も完璧なんだけど、その完璧なサイズが故に(本来であれば好印象なはずの)伸びないポリエステルとトリアセテートのジャージ生地が着づらくて、そして伸びない上にゴロゴロするロックミシンが着づらくて着づらくて、あとは肌にくっついていると意外と暑い。それでも気に入って着ている内に愛着が湧く代わりに「俺はなんでこんな着づらいものを頑張って着なきゃいけないんだろ」という疑問が湧いてきました。なんとかしたい。サイズを気に入ってるからサイズを上げれば解決する話じゃない。そもそも自分はこういうサイズ感の洋服が着たいだけで別にこれじゃなくてもいいんじゃないかと考えた末に辿り着いたのがハイゲージニットにすること。
伸びないポリエステルとトリアセテートのジャージ生地→ウールのニットで解決
伸びない上にゴロゴロするロックミシン→リンキングで解決
意外と暑い→メリノウールのハイゲージニットで解決
これだけで既に自分の目的のほとんどはクリア出来るはずなので、これ以上着やすい要素は必要ない。
というわけで、ラグランからセットインに変更。
流石に4回目になると端正な顔付きになることが想像出来たのでその顔つきに合わせて革巻きのriri zipを指定。よし、完璧だ。。。
で、僕が現実を忘れて楽しく過ごせたのはここまで。見積もりを取って1€=183円で電卓を弾くとギョッとしました。まあ、値段は数字だしな、一回サンプルを作って顔を見てみよう。と、待つこと2ヶ月。
ギョッとする請求書と共に完璧なサンプルが届きました。これでいいじゃなくてこれがいい。
以前耳にした「ニットにジップをつけようとすると何故か値段が跳ね上がる」という理由も、きっとジップカバーの部分もリブ作ってリンキングする必要があるからなのかな、と納得。
特に気にしてなかったんだけどポケットの内布もハイゲージでフルリンキング。そりゃあ高くなるよなあ。
機械を準備されて「さあお前がやれ」って言われても絶対に出来ないだろうしなあ。
やるかやらないか、ではなくやりたい。作りたい。ただ、それなりに数量も必要だしな。。。
と、数日悩んでいたところ、MANHOLE卒業生、現GOOD TIMEの山崎くんが遊びに来た際「河上さん、最近なにか企画してますか?」という話になったので、このニットを見てもらうことに。

「めちゃくちゃいいですね。物じゃなくて値段で悩んでるんだったら、作った方がいいんじゃないですか?次作る時にはどうせ今より高くなってますし。数で悩んでるならGOOD TIMEにも置かせてください。仮に今回売り切れずに残ったとしても、これは手元に残っててもいい洋服なんじゃないですかね。」と、言ってくれた。
GOODTIMEというのは、MANHOLEに2年間在籍して独立したヤマザキくんの店名でもあるし、モノづくりを始めたレーベルでもあり、彼自身を表現するための場所。(彼の隣にずっといた中台の紹介を引用)
彼の手元で本企画が販売されるのは2月25日-3月1日。詳しくはGOOD TIMEのinstagramを覗いて見てほしい。


ちなみに山崎くんはMANHOLEを退職して数日後にはNYにいた。
その後も約1ヶ月スパン、まるでお気に入りの街に買い物に行くくらいのノリで現地にいる。
この人は今、全力でこれをやると決めたんだな。という気持ちの良さが現地の人たちにも伝わっているようで、行く度に仲間や友達を増やしている姿は素直に格好がいい。
彼がもうMANHOLEにいない事実に寂しさを感じていないというのは嘘になるけれど、それ以上に彼がいつまでも治らない扁桃炎と闘いながら日本とニューヨークを行き来している姿は僕にやる気を与えてくれる。いや、扁桃炎は早く治してほしい。


そして、元Mukta / Sal、現Nip in the Airのイタイタイコウくん。
カーディガンの色決めの際にあらかじめ「申し訳ないけど商売になるギリギリのラインで値段を付けて去年より10%くらい値段が上がる、これをやって人が来るかって言われるとそうでもない、広告にもならない。こっちの趣味みたいな話に付き合わせることになるけど大丈夫?」と伝えても「やりましょう、ヘルムートラングのピンク好きなんですよね〜」と言ってくれた。
ちなみに「元Mukta / Sal、現Nip in the Air」と記載した通り、彼は長年勤めたMukta / Salを離れ、縁もゆかりもない東京で「Nip in the Air(ニップインジエアー)」という洋服屋を2025年11月に開業した。
彼のお店の紹介を僕の文字で行うのは出来るけど難しいので、割愛。
自分の内側の言葉を丁寧に、時に勢いで出力する人なので、彼に直接聞くかリンクを踏んでみてほしい。
一つだけ書くとすると「ここでは、洋服にブランドタグがついていません」という言葉通り、今回のカーディガンに付けられたMANHOLEのタグもしっかりと誇らしげに切られている。

そして、中台。
彼はいつも「河上がやりたいんならやりなよ」というスタンスで背中を押してくれる割には届いた時に「こんなのあったっけ?」とか言い出すくらいには無責任でたまに本当にムカつくけれど、彼の言葉には遠慮や嘘がないからそういう意味ではとても信頼ができる。
今回のピンクのカーディガンは「これは絶対大丈夫だろ」と言い、ジップアップカーディガンは「値段だけ聞くとすげえなって思うけど着たら欲しくなる。こんなのどこの展示会にも並んでないし、並んでたら仕入れるしな」と言っていた。いつの間にか買って着ていた。
「我々の理想の仕事」「意志の通じ合った連帯」
それらを僕が実現、実感するにはまだまだ道のりは遠いかもしれない。
けれど、どうやらそれが絶対に見えていないわけでもないようだ。
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