象の革 #2
– F.LLI Giacometti –
それは世界中の伝統的かつクラシカルなシューズに対する敬意、そして高いサンプリング能力と、イタリアの確固たる技術・経験の融合により生まれる実用性/ファッション性/独自性溢れるシューズブランド。
[ Marmolada ]
ジャコメッティ兄弟がドレスシューズを製作するかたわらで作っている登山靴へのオマージュライン”Marmolada”
登山靴生産の一大拠点であったヴェネト地方。
この地方では伝統的にノルベジェーゼ製法で登山靴を作っていましたが、時代の流れにより周りの技術を持つメーカーが廃業していきます。
ジャコメッティは、ノルベジェーゼ製法に求められる高い技術力を後世に残す為にドレスシューズの雰囲気を取り入れたマウンテンブーツを作り始めます。
その「ジャコメッティの登山靴」を作る過程で生まれたカジュアルなブーツを作り出す技術でジャコメッティ兄弟は、マウンテンブーツだけでなく様々なブーツを作ることに。
MANHOLEに並ぶチャッカブーツもそのうちの一つ。
こんにちは。
MANHOLEの河上です。
本日紹介するのは象の革を使用したチャッカブーツ。
象の革については以前のBlogで簡単に紹介しているのでご興味ある方は見てみてください。
「河上、茶靴なんて仕入れるの。しかもチャッカブーツ?」と、感じる方もいらっしゃると思います。
本当にその通りで、ず〜っと黒い靴しか履いて無かったし仕入れて来なかったです。
茶靴を履くのはスーツを着る時くらい。
なんかカジュアルに合わせるとボヤッとしちゃうから落ち着かないんです。
しかもここ数年ゆるい格好しかしていないので尚更。
足元で締めるくらいしかピリッとする要素が無かったのも、黒い靴を選んでいた理由かも。
あと、あまりボリュームのある靴も仕入れて来なかったです。
ゆる〜いカジュアルな格好にボリュームのある靴を持ってくる気分でも無かったので、ビブラム貼ってある丸っこいチャッカなんて目に止まらなかったかも。
最近はパンツのシルエットが太かったから余計に。
そんな頭が凝り固まった状態の中、急に入荷したこのチャッカブーツ。
僕が仕入れたものでは無く「こんなのもいいんじゃない?」っていう感じで代理店さんが用意してくれた物です。
今売り場に並んでいるチロリアンシューズ、スクエアトゥのマウンテンブーツも同様。
甲革はエレファントレザー。
製法はハンドソーンのノルベジェーゼ。
ソールはVibramのタンクソール。
軽くて丈夫で雨にも強いエレファントレザー。
靴が堅牢に、悪路にも強くなるノルベジェーゼ。
返りを良くするために底まで縫い通すF.LLI Giacomettiラインと異なり、Vibramの底まで縫い通していないので、靴底から水が染み込んでくることもありません。
Vibramの分厚いソールとノルベジェーゼによりかなりゴツく見えますが、木型自体は細身。
更にコバが薄いので履いてみると意外とすっきりとした印象。
靴のもつ機能性/装飾品としての完成度も高いMarmolada。
何にも合わない象革。 普段から馴染みがある革では全く無いので完全に異素材。
自分ではあまり履くことの無い茶靴。
自分ではあまり選ぶことの無いチャッカブーツ。
そう、この靴は何一つ今までの自分にフィットしないのです。
ここまでフィットしなかったら逆に興味が出てきてしまうくらい。
「食わず嫌いは良く無いなあ。」と感じる程、視覚的にも道具としても魅力のある靴。
ちょうど僕は” 黒の呪縛 “から解放されたくらいのタイミング。
服や靴は似合うものでは無く、似合わせるものだと感じます。
“こだわり”だったり”自分なりのルール”な〜んて聞こえは良いですが、それはただ単純に自分で自分の可能性を狭めているだけなのでは。
買い物は誰からも強制されない自分主体の楽しい行為。
だったら、「かっこいいなあ。」と自分が感じるものが全て似合うようになった方が良いよね〜。なんて、この今までの僕に全くフィットしない靴を見ると感じるのです。
河上 尚哉