OUR NEW UNIFORM IS THE SUIT.

さて、今回の企画において最も重要な点は「楽なスーツが着たい」というわけでは絶対にないこと。
「スーツ」もとい「ジャケット&トラウザーズ」というフォーマットをいかにも崩したディテールなんかは必要がない。あくまでも「楽をするためにスーツを着たい」というのが、今回の僕の目的だ。
で、楽をするために≒気分良く外に出かけるためのスーツ。
出来れば「今日もこれか」ではなく「今日もこれがいいな」あるいは「結局今日もこれか」と、思わせてくれる、顔立ちが良いもの、かつちょっとした隙があるものが望ましい。
生地の艶やかさや派手さはいらないけれど仕立て映えがするような、質実剛健で真面目な生地が望ましい。
一方で「仕事終わりですか?」や「転職活動中ですか?」と、言われないくらいの華やかさは欲しい。
加えて「パーティーでもあるんですか?」と、言われないくらいの慎ましさも欲しい。
ドレスシャツを着てタイドアップすることも当たり前のように出来るけど、例えばパジャマにしているTシャツやスウェット、ニット、フリース、パジャマシャツ、タンクトップ、裸、そんな格好に上下を合わせるだけで成立するくらいに組上のジャケットはクラシックなバランスから少しだけズレていて欲しい。
で、組下のパンツはオーセンティックであるのが理想だけど、綺麗に磨いた革靴に限らず、その日に履ける靴を履いて出かけられるくらいのバランスであると最高だ。






renoma、J.L SINGLE PEAKEDとPattes d’éléphant。
これは数あるrenomaのジャケット、トラウザーズの型の中でそれぞれ僕が最も好きな型だ。
そして偶然にも「最も好きな型同士の相性が良い」というのも、気持ちが良い。
生地はDORMEUIL社の12オンスの英国生地。


まずは組上のJ.L SINGLE PEAKED。
極端にカマが高く脇を締め上げられるような袖付が多い6,70年代のrenomaのジャケット。
一方で、唯一このモデルだけはそれを感じない、というのが個人的にとても気に入っている。
ノーベントでも自然なシングルのピークドラペルである一方で、ノーベントだと不自然な程長い着丈。
ゆらゆらと揺れるロングスカート。そして、高いボタン位置とズレたウェストシェイプ。
そして、renoma特有の丸みを帯びた襟先。
それぞれが「シングルのピークドラペル」という華やかでハンサムな顔付きを、どこかコミカルに崩している。



そして、Pattes d’éléphant。
2インプリーツのストレートシルエット。
一見クラシックなトラウザーズのようにも見えるけれど、浅い股上に25-26cmの広い裾幅。
男性服では感じたことのない腰骨を支えるようなフィッティングが与えるその印象は「重厚なクラシック」ではなく「軽やかなクラシック」だ。
まるで、重たい男性服を軽やかに着こなす女性のような、軽やかさがある。
「renomaのシグネチャーである両サイドのフラップ付きコインポケットに5cm幅のW仕上げ」といった過剰なディテールもコミカルに変える、軽やかさだ。
本来ボタンフライである本モデルだが、そこは「楽をするためにスーツを着たい」という目的の為にジップフライに変更。
ちなみに、穿き心地も軽やかだ。浅い股上、ちゃんとタックとして機能する2インプリーツ。
言葉で説明するのは難しいけれど、試着した時に是非しゃがんでみてほしい。

つまり、このセットアップ、もといスーツは僕の「楽をするためにスーツを着たい」という要望を叶えてくれる組み合わせ。
それは表面的なデザインだけでなく、着心地や着た印象からも感じることが出来るはずだ。

「人は自分が生まれついた階級に一生とどまっていなければならない」という前提を吹き飛ばしてしまった戦争。それが終結することにより「父親と同じ格好をする子供」から「父親と違う格好をする子供」へ徐々に移り変わっていった1930年代から1950年代。
すなわち、若者達にとって「自分が着る物は自分で選ぶ時代」が訪れた1960年代。
退屈な毎日を少しでも楽しく過ごすための音楽、服装、映画、場所。
そんな当時のヨーロッパが生んだブランドの一つがrenomaだ。
例えばレノマ兄弟が経営していたブティック「ホワイトハウス」ではドレスアイテムにジーンズを合わせる(当時としては相当型破りな)提案がされていたように、彼らは「自分たちが手にした新しい物≒デニム」と「自分たちが見慣れたテーラード≒クラシック」を組み合わせている。
型を破りたかった、着崩したかった、という欲もあったのかもしれない。
けれど、彼らは彼らで真剣に「それが格好がいい」と思って提案していたと思うし、その提案は(きっと顰蹙を買ったであろう一方で)非常に楽しかったと想像が出来る。
その証拠に「ドレスアイテムにジーンズを合わせる」というスタイルは随分前から「型破り」どころか「普通」になっている。重々しい伝統は常に革新によって軽やかになる。
一方で、2025年。
今、みんながスーツに対して抱いている印象はどんなものだろうか。

もし、その印象が「〜しなければならない」という謎のルールに満たされた重々しいものであるならば。「そういう着方もある」と認める一方で、このスーツを好き放題に着てみよう。
学校に行くため、職場に行くため、式場に行くため、ではなくどこかに出かけるためのスーツ(≒制服)。
スーツの楽な点は上下が既に決まっていることだ。「組上には組下を合わせる」と、決まっている。
冷静に考えると、これほど楽なことはない。

– J.L SINGLE PEAKED – ¥165,000-(tax included)
– Pattes d’éléphant – [zipper fly] ¥75,900-(tax included)
時代は変わる、古いものは無くなっていく、新しいものは増えていく。
伝統が革新を縛るものであるならば、革新が伝統を淘汰するものであるならば、僕らはその中庸を目指したい。古いものの良さと新しいものの良さを両方とも認めることで、僕らはそれぞれをもっともっと楽しむことが出来るはずだ。
1960年代よりも遥かに新しいものと古いものに囲まれた今の僕らが崩す、いや、遊びながら切り開いていく2020年代のrenomaのスーツで。
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