着せず季節は期せずして

みなさまこんにちは。3月下旬、近所の桜もちらほらと花開きはじめましたよ。毎年散歩のついでに梢の様子をよく確認する立派な桜がありまして、3月に入ったくらいから今か今かと写真まで撮ったりして最初の一輪をこの目に収めてやるくらいの勢いだったんですがね、先ほど言った通り気づいたらちらほらしていました。くそぅ、いつの間に。連絡くらいしてくれてもいいじゃんか。なんて、しみじみお花のお話なんかをしていると、「オマエ、ジジイかよ!」なんて言われるのが常ですが、ぼくみたいなやつがそのままジジイになって相も変わらず花の話してるだけだろ!ほっといてくれ!あれ……なんでキレてるんだろう……。要するに、この雨でいたいけな桜が散らないことを願うばかり。まだヒュルリラには時期尚早。
というわけで!世間話にほっこりお花も咲いたことですし。
本日はFRANK LEDERより素敵なファブリックのトラウザーズでございます。

まずは後ろ側。というのもこのパンツは前後で生地が切り替わっています。
ひんやりとしたグレーのヘリンボーンです。凹凸があるせいか肌から離れる感じ。
まーるいくるみ釦、そして片玉縁ポケットのチェック。それが・・・(クルリ)

フロントの生地です。
これまた絶妙なグレー、白、茶色というチェック。と言ってもただの一様なチェックではないことが写真から伝わっていると幸いです。所々ちらほらと、小さなウールのふわふわネップが生地平面から飛び出しています。白、グレー、なぜか明るいオレンジがポッピンしていたりもします。
前後ともにバイエルン州南部、アウクスブルクという町の仕立て屋で見つけたデッドストックファブリックとのこと。そしてワンタック。ワイド。つまりリラックスして穿けますね。

「前後で生地が切り替わったパンツです」と聞くと、何となく意表を突くようなデザインを思い浮かべますが、このパンツはまたそれとも違った流れの切り替わり。
バツン!!と切断されてハイ次こっち!ではなく。徐々に移り変わっていく、まさに隣り合う季節のような変化。ちょっと風情が過ぎますかね?おっと、星空にも見えてきましたよ。

ちなみに、こちらのパンツはFRANK LEDERの春夏コレクションにラインナップされています。
それもそのはず、この時期に秋冬モノを紹介することはたまにあるかもしれませんがほとんどありません。
一方でこのパンツ。生地はサラッとした梳毛ウールではなく「これは春夏物なのか?4シーズンズですらなさそうだけど」と疑問に思う若干起毛感のあるウール生地。
ふむ、春夏とはなんぞや?と考えさせられそうにもなりますが、そんなの考えても答えは簡単に見つかりそうもありませぬ。ちなみに、というか流石に厚手のがっつりとしたウールではなく、軽やかに風の通りそうなウール生地です。ただ、先ほど書いた通り「通年生地」とも言えないし、夏用のウールでは決してない。
ここでたまらず河上さんに聞いてみました。「これ、春夏物ですかね?」
返ってきたのは「かつて大半の地域で冷房なんて必要なかったヨーロッパの地、しかも田舎の仕立て屋にそんな日本の都合に向けられた生地が眠っているわけがないから、春夏物でも秋冬物でもないけど通年物でもないんじゃないかな。その日の目と肌で決めよう」という答え。
「現場の吉田さ〜ん」
「はーい、太腿あたりの裏地のアセテートも相まって爽やかな穿き心地でーす。今からもうしばらくの間は快く穿けそう!で、夏をまたいで秋の香りがしてきた頃に再び真価を発揮することでしょう!」



秋冬モノ、春夏モノというようなカテゴリー分けは言ってしまえばそもそもコレクションを作成する側の都合だったりもしますよねきっと。あ、ちなみにぼくは遥か昔のド真夏、まだ僕が働く前のMANHOLEに半袖Tシャツに鬼の縮絨ウールのパンツ、というおバカコーディネートで大汗をかきながら来店したことがあります。「悠人、気持ちはわかるけど暑そうだから、自分の目と肌と相談しながら洋服を選ぼう」と教えてくれました。確かにその時僕の目と肌は暑すぎると言っていました。
しかし、今回のような、前季の余韻を残す絶妙な生地感のモノと、次季の軽やかさが一緒になったような服装は今でも大好き、というか無意識にそうなっている気がします。
つまり、自分の肌で、自分の目で、自分がその時着られるものを選ぶのは楽しいということです。
更に。春夏物とか秋冬物とか、どこに住んでどこで暮らしているのかもわからない人が決めたことよりもまず、自分の肌と目と後ろの背景を信じた方が自然だとは思いませんか。


自分の目、自分の肌でモノのあわいが感じられる良い季節が来ています。
せっかくですからそんなパンツはいかがでしょうか。



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