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「何」でもない




「サドルシューズ、いいと思うんだよね〜。 河上君、どう?」

F.LLI Giacomettiの代理店であるWHEELIE代表の秋山さんが珍しく提案してくれた。





WHEELIEさんにはたまに顔を出すようにしている。

お客さんから預かった修理靴を持って行く為っていうのもあるけど、その度に靴の事を詳しく聞くことが出来るから。
靴のことは調べても調べても文字ベースだとあまり頭の中に入ってこない。
実際に物を目の前に、詳しい方から話を聞くのが一番良い。

途中から「お客さんの靴を修理に出す」というよりか「話を聞きたいからお客さんから無理やり修理靴を集めて事務所に遊びに行く」というようになってしまった。


もちろん秋山さんは靴のお直し屋さんでは無い。
とても忙しい方なので、僕みたいな暇な奴の対応をするのは時と場合によっては困るだろう。


それでもわからない事の要点をまとめて聞きに行くと、ちゃんと答えてくれる。

僕はそれをまた、自分のお客さんに伝える。
靴を買うのは、靴を売るのは本当に楽しい。






そんなこんなで事務所に行く度にサンプルを目にする機会がある僕は、あらかじめ欲しいものが決まった状態で展示会を迎えることが多い。

その場で確認するのはサイズをどうするか〜とか、革をどうするか〜とか、木型がどうこうなどを最終的に教えてもらって、次の次のシーズンはこれにしようかな〜、なんて話をするから結局長居してしまうんだけど、型を決めるのにそんなに時間をかけない。
(むしろそこに時間をかけると、「普段あんだけ時間をかけてやっているのに、こいつはまだ悩んでいるのか。」と思われそうなので、クールに装っている。つもり。)



その為、商談の際に「この型どう?」っていう具体的な提案をあまり受けたことが無いので今回は少しびっくりした。



” F.LLI Giacometti “

– SADDLE SHOES –
[ VACCHETTA ELBAMATT ROVESCIO + VACCHETTA ELBAMATT ]



VACCHETTA ELBAMATT ROVESCIO = エルバマット製法のバケッタレザーの裏。
VACCHETTA ELBAMATT = エルバマット製法のバケッタレザーの表。


革の細かい説明は少しややこしいので直接説明させてください。
簡単にいうと植物タンニン鞣しを行った、オイルをたっぷり含んだ厚手の革の表と裏のコンビです。

バッグステイは切返さず、主張の少ない裏のバケッタレザー。



一見内羽根、構造的には外羽根。
内羽根でも、外羽根でも無い紐靴。

馬の鞍のようにアッパーにぐるっとレザーが巻かれるデザインが特徴的なサドルシューズ。

木型は先日紹介したモンキーブーツと同型の物。
インサイドストレート/アウトサイドカーブのとても足馴染みの良い木型。

ハンドソーングッドイヤーウェルテッド。

ソールはビブラムのタンクソール。
返りを良くするために底まで縫いこんでいます。



イギリス発祥、アメリカで大衆化された靴:サドルシューズ。

イギリスのSADDLE OXFORDはレザーソール、革の切り返しも同色を使うことが一般的。

対してアメリカのSADDLE SHOESはアクティブシーンやカジュアルに用いられることが多い為ソールも分厚く、コンビネーションカラーで作られることが主流でした。



イギリス発祥、工場と革はイタリア、デザインはアメリカベース。

この靴はどこの国の物?

どこの国のものでも無い。

だからこそどこの国の物にでもなれる。



” F.LLI Giacometti “

– SADDLE SHOES –
[ VACCHETTA ELBAMATT ROVESCIO + VACCHETTA ELBAMATT ]

¥100,000+TAX-



実はこの靴、あまり僕の意向を汲んでいないので個人的にはとても仕上がりが楽しみでした。

「サドルシューズどう?」と聞かれてから一週間、どんなコンビネーションにしようかなあ、って考えたんだけど、悔しいことに何も出てこない。

「サドルシューズ、オーダーしようと思うんですけど、実際どんな革がいいと思います?」と尋ねて「あー、河上君とこはこれだろ!」という流れで出来上がった靴。





靴というのは洋服以上に、信用できる人から買いたいもの。

そして、新しいものを手にする度に「自分はまだまだ何にも知らないなあ。」と痛感するものでもあるのです。







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河上 尚哉