2019/09




Kilgour French & Stanbury

Heinrich Dinkelacker





僕は、先ず、自分自身の為に装う。 それが他の人に認められれば、嬉しい。
僕自身のスタイルは、日を追って洗練を高める旅のようなものだ。
他の方法ではおそらく受け容れることが難しい自分の側面を、ファッションが表現する。
その意味で、僕は毎日の旅路を楽しんでいるし、旅が終わってしまう日を恐れている。

引用元:SSENCE – Stefano Pilati –





「河上くん、SSCENCEのピラーティの記事読んだ? 良いことが書いてあるんだよね〜。」

MANHOLEでも取り扱いのあるブランドのとあるデザイナーさんから教えてもらった記事。

パッと見ただけで拾う部分がたくさんあるし、何故だか読むとなんとなく自分が肯定されているようで元気が出た。(規模感はどうあれ)



前職の中小個店で得た一番大きなものは「外から情報を得ること、知らないことを教えてもらうこと」。


外に出て今まで関わることの無かった人と会う。

展示会の内容ももちろん重要ですが、商品以上に大切なのが展示会で話をすることで得るもの。



僕に出来る仕事は、それに自分の価値観を乗せること。
薄めずに、どう濃くするか。

その上で、人に伝えること。



FRANK LEDER – COLLECTION ” Oderbruch “

[ Schladminger Wool Long Coat ]




これはMANHOLEの開店祝いとして、ある方から受け取ったもの。

良い意味で驚きは無かった。

なんとなく、そういうことをしてくれそうな予感はしていた。



このコートを受け取ったことで自分にしか出来ない役割が増えた気がする。

今の僕には、自分が苦労して作り上げた自分のお店がある。





Heinrich Dinkelackerは近くのお店で買うことが出来る。
現行の革靴は自分で新品を買って自分の物にしないとわからないから、人にあげるものでも人から貰うものでも無い。

だけど、Kilgour French & Stanburyのジャケット、FRANK LEDERのコートはもう手に入らない。
いつかリプロされてもそれは全く別の物。

10年後か、20年後か。
いつかどこかで出会うであろう誰かに渡すことが、今から楽しみで仕方がない。





僕はおそらく手放すことのないモノをいくつか持っています。

誰にでも価値があるものでも無いかもしれないし、実際に身につけることはしばらくないかもしれません。

企画のサンプルにすることもきっと無いし、ましてや売ってお金に変えることなんて絶対に無いモノ。

僕にとって本当の” 手放すことのないモノ”というのは物理的なモノではなく、今まで出会った様々な方から受け取ってきた主張や意思、思想から形成される僕だけの価値観なのかもしれません。






最後に僕が大好きで非常に共感が出来る、ある方の価値観を紹介させてください。




彼のブランドアイコンであるシャベル。これは労働の象徴であると同時に新しい道を切り拓くための道具でもある。毎シーズン彼の作る服に添えられたお伽噺のようなテーマ性。それはエディ スリマンにはちっともハマれなかった当時の僕にシャベルを持たせ、退屈な日常から少しだけエスケイプするためのトンネルを掘らせてくれたんだと思う。
ファッションとはモノではなく物語だ。

引用元: – 我が逃走 – Amvai 鶴田啓 (international gallery BEAMS)








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河上 尚哉




Kilgour French & Stanbury





こんにちは。
MANHOLEの河上です。

僕はおそらく手放すことのないモノをいくつか持っています。

誰にでも価値があるものでも無いかもしれないし、実際に身につけることはしばらくないかもしれません。

企画のサンプルにすることもきっと無いし、ましてや売ってお金に変えることなんて絶対に無いモノ。




” Heinrich Dinkelacker “
– Rio – [ Cordovan Full brogue ]



僕が革靴を好きになるきっかけを作ったのは、アメリカ靴でもイギリス靴でもフランス靴でもイタリア靴でも無く、ドイツブランド/ハンガリー製のシューズメーカー:Heinrich Dinkelacker。


「ボタンブーツが欲しいなあ。」と何故か思い立った当時の僕は、下調べもせずに色々なお店を回って探して聞いて「そんなものは扱っていない。」と無下に断られるという流れを繰り返していました。



そんな中、BEAMSで対応してくださった方が唯一”ボタンブーツがどんな物で、どこであれば扱っている可能性があるか”を案内してくれました。

その丁寧な対応の最中、僕の視界にチラチラと入る”トリプルレザーソールの無骨ながら品のある見たことの無い形の革靴”。


説明を聞き終えるまでにボタンブーツのことは正直どっかに飛んで行ってしまっていたのですが「どこかで働くなら、この人のような対応が出来るようになりたい」という気持ちをそのまま持って帰って履歴書に書き込みました。





ジョー・レンデンバッハ社のオークバーク、重厚なトリプルレザーソール。
飾り釘、トゥスチール。

ホーウィンのシェルコードバン。
メダリオン、ブローグの美しい飾り穴。

崖のように反り立つ特有のトゥ。

無骨だけどエレガント。




「お前にこの靴はまだ早い。」と、いうことで結果的に色々な革靴を履いた後に買う事に。


アメリカ靴、イタリア靴、イギリス靴。
それまでに買ったどんな靴よりも、僕の甲高で幅広な足の形にハマってくれたシューズでした。



その後、
同じ形/コードバンのダークコニャック、同じ形のスウェード/クレープソール、同じ木型の3アイレットのプレーントゥ、ローファー/Wienを立て続けに買う事になるのです。



「同じ形で色違いで買っても、どうせ片方しか履かないんだからやめなよ。」という先輩の制止を振り切って買ったダークコニャックは結局履かなくなりました。

同じ木型の3アイレットのプレーントゥは、なんかフィッティングがしっくり来なかったので履かなくなりました。


だから僕はお客さんがどんなに気に入ってもサンダル以外は色違いでシューズを買わせることは無いし、同じ木型のシューズでも必ず履いてもらってフィッティングを見てから買ってもらうようになりました。



「コードバンは合理的なアメリカ人が好む、磨けばすぐ光る合理的な革だよ。だから変にありがたがる必要なんて無い。しかもそれ、フルブローグでしょ? 雨に濡れることを怖がるよりも、雨に濡れた後に適切な手入れを行う方法を身につけた方がよっぽど君の為になる。 」

原宿の隠田区民館近くにある老舗のテーラード古着屋の店主の方からこう教わった時から、僕のコードバンに対する印象は変わりました。


確かに裂けには弱い繊細な革だけど、濡れて毛羽立つのは潰して磨けばいい。
色むらが出来るのもコードバンの味。

「磨いてピカピカ!鏡面磨き!」なんて事を家で楽しむよりも、外に履いて出かけた方がよっぽど楽しい。



梅雨時期にカーフの靴がどんどんカビていくのに対し、コードバンの靴だけは何故かカビが生えなかったのも、僕がコードバンが好きな理由でした。(なんでなんですかね。)






履くためにあるのか、磨くためにあるのかわからない、尚且つお金になりそうな靴は会社を作る時にあらかた処分してしまいました。



買ってから8年目。
ここ2〜3年はボリュームあるシューズの気分でも無かったし、紐靴に疲れたせいか履いていなかったけど。


この靴だけは、どうしても手放せませんでした。






僕の適当な履き方にも、適当な生活にも、適当な手入れにも耐えてくれた靴。

今尚「かっこいい靴だなあ。」なんて袋から取り出す度に思わせてくれる以上に、この靴を履いて経験したことや、失敗したことを思い出すモノでもあるのです。







そろそろまた履いてみようかなあ。



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河上 尚哉




こんにちは。
MANHOLEの中台です。


明日から古着の買付に出かけます。
その間、寂しがり屋の河上は一人で店番。。

「寂しくないよ〜。」と、本人は強がってますが、目は確実に寂しそうです。


皆さん顔出してあげて下さいね!

さて、今回はどこに買付に行こう〜、と2週間前に急遽候補を考えました。
NYも有力候補でしたが次回に持ち越し、僕自身初めて訪れるタイへ。


アメリカ・ヨーロッパから古着が流れて来るタイでは一体どんなものに出会えるのか、、
噂レベルの情報しかない状態なので、その場の空気感と勘でフラフラ探してみようと思います。

そういうわけで、少しの間僕は不在なので、商品を投入しておきました。

完璧じゃ〜ん!と言葉に出てしまうほどの60’sシャツ2枚。


色・素材・サイズ、どれも良い。
こういう服には目に見えそうなぐらいのオーラが出てます。
あまり使いたくないワードだけど、”なかなか見つからないですよ〜”って言いたくなりそう。

もちろん他にも、MANHOLEなりのスペシャルが沢山入荷してます。
気軽に来てもらえたら嬉しいです。

それでは、帰って準備して寝ます!

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中台 竜郎






こんにちは。
MANHOLEの河上です。

僕はおそらく手放すことのないモノをいくつか持っています。

誰にでも価値があるものでも無いかもしれないし、実際に着ることはないかもしれません。

企画のサンプルにすることもきっと無いし、ましてや売ってお金に変えることなんて絶対に無いモノ。




Kilgour French & Stanbury
“Navy Safari Jacket”





これは昔、当時の先輩から譲って貰ったジャケット。

今思うと、当時のドレス業界のメインストリームが持つ魅力を僕は感じることが出来ませんでした。

売り場を見渡すとイタリア”風”のアンコンの軽い仕立てのスーツ/ジャケットが主流。
(もちろんそれもファッションではあるとは思いますが、「仕事着」としての側面で提案することの多いモノに対して、洋服としての魅力を感じることが販売員経験の浅い僕には難しかったのかもしれません。)

中にはSavile Rowのビスポークテーラーの既製服や、デザイナーズブランドが監修するコレクションラインなども並んでいましたが、そこに興味を持つ手がかりを他の洋服から感じ取ることが難しいほど。

何がわからないのかわからない状況だった僕に言葉や感覚で伝えてくださる方は多くいらっしゃいました。

ただ、勘のあまり良く無かった僕は、実際にモノを手にするまで、きっかけを掴むことが出来なかったのです。





このジャケットは僕にとって、そのきっかけを作り出してくれた洋服。

譲ってくれた先輩はもしかするとそんな意図も無く普通に生活費に困ったから僕に売ったのかもしれません。

「買い戻したい。」という連絡を数年に一度もらうのですが、のらりくらりとかわしている最中です。





袖物もパンツも、容赦なく魔改造する人でした。

おそらくこのジャケットもほとんど原型を留めていないでしょうが、”洋服を考えながら着る楽しさ”を伝えてくれました。






「本物」に触れやすい環境にあったのだから、価格もデザインされた「〜風」に小銭を落とさないで、無理してでも「本物」を自分で買っていればもっと楽しかったんだろうなあ。

「aldenとかHeinrich Dinkelackerもそんなに買い漁らなくていいから、ビスポークでジャケットを2,3着作っておきなよ〜。」と、当時の僕に伝えてあげたいですが、人生なんてそんなもんですよね。




中小の個店と違い、大手企業にはたくさん「伝えてくれる人」がいるし、「本物」に触れる機会を自分次第である程度作り出すことが出来る。

それに気付いたのは大手企業を抜けて、前職の中小個店に移ってしばらくしてから。





バツバツのフィッティング。
ウェストをえぐるようなシェイプライン。

サイズも合わず、僕が生きてきたどの時代にも全くフィットしないこのジャケット。

移り気な洋服の時代性に振り回されそうな時に冷静になるための、僕のサイズゲージでもあるのです。








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河上 尚哉

赤い服





FRANK LEDER – LODEN WOOL SIDE POCKET SHIRT –







こんにちは。
MANHOLEの河上です。


中台と一緒に古着を見るようになってから、やたらと赤い洋服が目につくようになりました。

“赤い洋服”というのは敬遠されることが多く、新品のブランドを買い付ける際も「めちゃくちゃかっこいいんだけど赤だしなあ。」なんて二の足を踏むことが多い。


おそらく古着も一緒で、ディテールだったり生地だったり背景だったりノリだったりブランドだったりはめちゃくちゃいいんだけど、”赤”だから売れ残っていたり値段が安く設定されていたり。





本日紹介するのは、先日のFRANK LEDERの”LODEN WOOL SHIRT”と共生地のパンツ。

数シーズン前から定番化した、股上の深いアウトツータックのワイドテーパード。

「同生地で別カラーで展開されるブラウンやグレーのような色の方が受け入れられやすいんだろうなあ。」なんて考えもありつつ、どうしても売り場に並べたかった”赤”のみ、この形で仕入れました。






バーガンディなどのようなまだ取り入れやすい赤では無く、真紅の燃えるような赤。




FRANK LEDER
” LODEN WOOL 2 TUCK TROUSERS “
¥48,000+tax-



そもそもFRANK LEDERの表現する赤は取り入れやすい物が多いです。
ヨーロッパの染料によるものなのか、用いる生地によるものなのか。。。

上手く説明が出来ず抽象的な表現で申し訳ないのですが、実際に着てみると「あれ?めちゃくちゃかっこいいかも。。。」と肌で感じられる良さがある。




今まで取り入れなかった色を取り入れてみる、というのは少しだけ勇気が必要な行為だけど、いつか「あれ?めちゃくちゃかっこいいかも。。。」と感じられるタイミングが来る。

そういう意味では、このFRANK LEDERのローデンウールの赤は、それを少しだけ早めてくれるきっかけになるようなアイテムだと感じます。



自分が無意識に諦めている物。

その枠を少し外すだけで新しい楽しさを感じることが出来るのも、洋服の良いところなのです。






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河上 尚哉