ジャコメッティは砕けない
Thu.6.30.2022
僕がMANHOLEに来て、半年が経った。 河上と中台が立ち上げたMANHOLEはこの夏で、三周年を迎える。 時の流れるスピードが年々速くなっていく気がする。 三年前、まだ河上がMANHOLEオープンの準備に東奔西走していたころ。なんとなくその品揃えの内容を知り始めた僕は「実に河上らしいセレクトだな」と思ったような気がする。CLASSやFRANK LEDER、NICHOLAS DALEYなど、現在もMANHOLEの中核をなすファッションブランドに混じって F.LLI Giacomettiの名前があった。河上は自分のことを「パンツが好き」だというけれど、実際のところ僕から見ると、河上は「革靴が好き」だと思う。 初めて河上と出会った十年前から、彼がスニーカーやカジュアル靴を履いている姿を僕は見たことが無い。当時僕が働いていた店にHEINRICH DINKELACKERのブダペスターや F.LLI Giacomettiのグルカサンダルを買いに来ていた記憶もある。そもそも、彼が十年前に洋服屋に入ったきっかけは、とある僕の先輩に靴の接客をされて衝撃を受けたかららしい。若い頃はストリートブランドを着ていたらしい彼を、本格的に洋服の道へ引き寄せたのは「革靴」だったのかもしれない。 こんにちは、鶴田です。
僕が河上と出会うよりも少し前、僕はF.LLI Giacomettiのシューズと出会った。当時僕が働いていた店に入荷してきたそのシューズたちは、作りも本格的だし材質も良い。しかし何よりもその佇まいは「今までに見たことのない不思議なテイスト」を感じさせた。英国やイタリア、フランスのクラシックブランドに勝るとも劣らないクオリティを誇る一方で、絶妙にファッション的な意匠・バランスを身に纏(まと)ってもいたのだ。 F.LLI Giacometti が入荷してしばらくが経ったある日、店内に大男が入ってきて「どう? ジャコメッティ。売れてる?」と尋ねられた。彼はF.LLI Giacomettiの説明を細かくしてくれたが、(それなりにシューズのことを勉強してきたつもりだった当時の自分にとっても)その言葉はほとんど謎の呪文でしかないほどに半分以上が理解不能だった。しかし、彼が語る言葉の端々からは「今の気分はさー」というキーワードが響いてきた。 F.LLI Giacomettiが纏っているクラシックかつファッションな空気感。その正体はこの人か、と思った。 F.LLI Giacomettiを日本に輸入する代理店の代表、秋山さんだった。
例えばGUIDIのPL1。僕はこの靴をクラシックだと思っている。どんな時代であろうと、そこにそのまま固定された状態で居続ける存在感。ある意味ではALDENの990やV-TIP、J.M WESTONのSIGNATURE LOAFER 180、HEINRICH DINKELACKERのブダペスターなどと同じなのだ。異様なほど力強い佇まいとは裏腹に、PL1は本質的にクラシックなレザーシューズであり、だからこそ僕は河上に仕入れてもらうように頼んだ。 一方でF.LLI Giacometti。 時代の気分と共に柳のように変化しながらも、その根底にはクラフトマンシップが脈々と流れている。移り気だけど、頑固。逆に言うと「クオリティコントロールさえしっかりとできていれば、時代の空気感=ファッションに左右されても構わない」という自信をF.LLI Giacomettiと秋山さんからは感じる。 きっと、そんなところが河上に合っているのだろう。河上とF.LLI Giacomettiを十年以上見続けてきた僕には、なんとなくそう思える。
MANHOLEに並ぶF.LLI Giacomettiの仕様は、基本的に河上が決めている。 本人は「ノリ」だと言い放つかもしれないが、しかし自分自身の中にある「気分」をキャッチするという作業は、一度心の奥深くまで潜る工程を必要とするかもしれない。形・生地・値段があらかじめセットされた状態で見せられるファッションブランドの展示会と違い、 F.LLI Giacomettiのようなファクトリーブランドの靴をオーダーするためには、世界中のトレンドやデザイナーの提案と擦り合わせるのではなく、個人的な気分の在処を明らかにしなければならない。 こうしてMANHOLEの店頭には様々な形のF.LLI Giacomettiが並んでいる。過去に河上が選んできたダイヤモンドパイソンのモンクストラップやカラーレザーのグルカサンダルをはじめ、MANHOLEのラインナップは一見すると奇抜で派手に見えるが、それでもあっという間にお客さんの手元に渡っていった。靴屋ではなく洋服屋でありながら、これほどまでに靴の提案をお客さんに受け入れてもらっている店を僕は他に知らない。
MANHOLEに置いてあるF.LLI Giacomettiは強い。 一般的に受け入れられやすいラインナップだとは決して言えない。しかし、それは伝統の重さをありがたがるだけではなく現在進行形の気分を共有するMANHOLEというお店と、その場に集う人たちの存在があってこその強さだと思う。世界的な状況の変化の中で古典的なコンサバ思考に拍車がかかり、定番モデルは強くなりファッション靴は弱くなったと囁かれることが多い現代において、強さとは果たして何なのか。歴史だけが強さの証ではない。 今の気分を提案できる秋山さん、クラフトマンシップの信念に基づきその気分を形にできるF.LLI Giacometti、お客さんや自分たちの気分に向き合う革靴好きの河上。そこにMANHOLEという場が与えられ、お客さんがそれらすべてを飲み込んでくれたとき、ファッションのためのシューズは初めて強くなる。 ジャコメッティは砕けない。 それは古典主義の目線のみでは測ることのできない強さでもある。
※ F.LLI Giacomettiの新作三型は、7/1(金)より店頭にて発売いたします。 ※適正サイズをご案内するため、MANHOLEではレザーシューズの通信販売を受け付けておりません。フィッティングに関しては是非店頭にてお試しの上、ご確認ください。 サイズの確認メールにはご返信できない場合がございます。 遠方の方にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。
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こんにちは、中台です。 暑い、、暑すぎて毎日冷たい蕎麦を食べてます。 今日の昼は冷たいうどん。帰ったら冷たいそうめんを食べます。 いつの間にか梅雨も明けてるし、どうなってんの東京。 何を着ても暑いし、せめて楽しそうな洋服が着たい。
MANHOLEに並ぶパンツの中で一番楽しそうだった、NICHOLAS DALEYのリネンショーツ。 存在感のあるストライプ、大胆な切り替えが目を惹く賑やかなパンツ。 ウエストは最小サイズでも94cm、これをプルコードで絞りあげて穿く。 いくらでも絞れるので、誰でも穿ける。
NICHOLAS DALEYらしいごきげんな2パターンのストライプ。 ノリだけじゃない、深い表情を持つリネン生地は”emblem”社のもの。 全ての工程をアイルランドで行う数少ないメーカーらしい。 本物のアイリッシュリネン。
雰囲気のあるブルーストライプ。 ジャケットに合わせてもいい。 裾のコードを絞ると、股の深さが際立って違和感。
いつもの格好にただ合わせただけ。 内心は楽しんでいるが、顔に出ないタイプ。
” NICHOLAS DALEY “– PULLCORD SHORTS – Size : 28 / 30 / 32 ¥60,500-(tax included)
BLOGを書いている最中、顔馴染みのお客さんが二組ふらっと来てくれたので、なんとなく勧めてみるとそれぞれがこのパンツを買ってくれた。 おそらく明確な理由は無い。 「なんかいいなあ。」と僕が感じたように、直感的な買い物だったような気がする。 夏の洋服は「涼しい」だけでは選ぶ理由にはならないのだと思う。 まずは楽しめるかどうか。 このパンツは何を着るにも億劫な夏でも、洋服を合わせる楽しさを感じられる。 自分の”今”に従って、素直に選んでみると楽しいイメージが湧いてくるかもしれません。
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” renoma “– Tahiti –
” NICHOLAS DALEY “– PULLCORD SHORTS –
” ACRNYM “ – P39-M –
” NICHOLAS DALEY “ – PULLOVER VEST –
” ULTERIOR for MANHOLE “– Rayon ripstop Atelier Jacket –
” NICHOLAS DALEY “– PULLCORD SHORTS –
renoma– MARTINIQUE –
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裾幅が狭いパンツって。 ご無沙汰? こんにちは、鶴田です。
ファストファッションのおかげでストレッチスキニーデニムは国民服になったけれど、それは国民服なので、ファッションのサイクルからは一旦除外するとして。 ダボダボ、ワイド、バギー、フレア。たまに裾スリット入りとかも。 多様化が進む中でファッションの形は広がったけれど、この数年で街中に出ていたパンツはことごとく、裾幅が広い。20代前半の若い世代の中には「細いパンツというアイテム」自体が射程距離圏外のままで大人になった人もいるだろう。 「細いパンツ、穿いたことないです」 今シーズンリリースされたCLASSの細いウールパンツを紹介した時も、そんなことを書いた気がする。CLASSが面白いのは、いまの世の中的に全然必要とされていないアイテムを瞬時に見つけて、みんなが本格的に必要とし始めるギリギリ手前のタイミングでリリースしてくるところ。そう、細いパンツ、ファッションとしては久しく見なかったこともあり、ちょっと新鮮なんです。 そして、今回紹介するのは「細いパンツ」のなかでも、いまや最強のマイノリティ。最も流行っていない形。それが「裾幅が細い大テーパードパンツ」。 m’s braqueのジョッパーズパンツ。
ご覧の通り、大テーパード。
股上、深い。ヒップを丸々包み込んでくれる。
” m’s braque “ – COTTON LENEN JODHPURS PANTS – ¥50,600-(tax included)
深い1インプリーツとボリュームのあるワタリ、深い股上、絶望的に細い裾幅。 このジョッパーズパンツには生地違いで黒いコットンギャバジンバージョンがある。二か月前にその黒いパンツを紹介したとき、河上は以下のように書いていた。 “鶴田さんは入荷当初「このパンツってどんな人に向けて仕入れたの?」と、僕に聞いてきました。全然気分じゃなかったんでしょう。 先に書いた通り、僕はこのパンツを何故仕入れたのかを忘れていたので「さあ、何を思って仕入れたんですかねえ。」と過去の自分のせいにしてその場を逃れることにしたのですが、今朝「素足に革靴。そして暑い時期に試着したからめちゃくちゃ良く見えたんです」と、伝えたところ納得してました。よかったです。” そう、半年前の時点で僕にとってこの「大テーパードパンツ」は気分の外側にあった。 10年前、UMIT BENANがブレークしたタイミング。 7年前、amiがブレークしたタイミング。 今や若い人たちにとっては聞きなじみのない名前となったかもしれないデザイナー達の名前と共に「股上が深い大テーパードパンツ」は僕の中に入り、そして通り過ぎていった。
いまや何周目なのか分からないくらい、僕を通過していったいろんな形のパンツ達。そして、再び(三度?いや、もっと?)僕の中に入ってこようとする、テーパードパンツ。
コットン、キュプラ、リネンの三者混でさらりとした質感が涼し気。クロップド丈の細い裾幅がレザーシューズの素足履きを一層軽快に見せてくれる。 「素足に革靴。そして暑い時期に試着したからめちゃくちゃ良く見えたんです」という河上の言葉は間違っていなかった。 今見ると、めちゃくちゃ良いじゃん。河上、バイヤーじゃん。 東京をはじめとする、日本の各地に住んでいると様々なトレンド情報が交錯していることに気づく。ワイドショーで取り上げられるネタのように「何かが終わって、何かが始まる、今の最先端はこちらです」という状況の飽和を感じる。その気分を反映するかのように、今はあらゆるシルエットのパンツが同時多発的に濫立している。ワイドもフレアも、そのうちにスリムも「何も終わらずに、何かが始まる」その中で最後のミッシングピースが「久しぶりの大テーパードパンツ」なのかもしれない。 個人主義の都・パリに住み、個人的なコレクションを発表している松下さんにとって、サルエルパンツのように股上が深いテーパードパンツは、情報社会の中でむやみに浮かんだり沈んだりしない「当たり前のクラシックアイテム」なんじゃないか、という気にもなってくる。それが「めちゃくちゃ良く」見えるかどうかは、すべて自分のタイミング次第。 僕はMANHOLEが個人主義の塊になればいいなと思っている。フレアでもバギーでもない選択肢をお客さんが自らのタイミングで選ぶために、このパンツはMANHOLEの店頭に並んでいる。 m’s braqueの柄ショーツはあっという間に無くなってしまったけれど、それでもお客さんが前向きな発見をできるように、MANHOLEの中でこのテーパードパンツが他にはない光を放っているように、僕には思えるのだ。
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こんばんは。中台です。 明日から発売するm’s braqueの陶芸柄ショーツ。 僕からも伝えたいことがたくさんあったのですが、今(21時30分)Blogを書き始めたのでサラッと紹介させてください。まあ、河上と鶴田さんがたくさん書いてくれてたからちょうどいいか。
今回の別注、生地を裏にした物もあります。 「裏バージョンも作ろうぜ!」と、なったので各サイズ1枚ずつ作りました。 裏にしても柄が透けます。見た通りですが結構印象が変わります。
こうやって比べてみると、陶芸柄の強さがわかりますね。 ちゃんと「2インタックのドレスショーツだな。」とわかる裏バージョンに対し、全てのディテールが陶芸柄に呑まれた表バージョン。
穿くとこんな感じ。 白いけど、白くはない。 地味だけど、地味じゃない。 地味派手白柄ショーツ。
” m’s braque for MANHOLE “ – 2 INTUCK SHORTS – [陶芸柄・裏] Size : 36 / 38 / 40 ¥48,400-(tax included)
裏バージョンは店頭のみで発売します。 僕らは洋服を売りたいからMANHOLEを開いたわけではなく、会ったことのない人と会ってみたいからMANHOLEを開きました。お店に来た時よりカッコよくなって帰ってもらう為に洋服を並べています。 裏でも表でもいい。洋服でも、洋服じゃなくてもいい。 毎日の楽しみ方、一緒にお店で探しませんか。
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昨日河上が紹介していた m’s braqueの陶芸柄ショーツ。 そうそう、こんなのも企画していたんです。「そんなのあるなら、先に言ってよ」と思う方もいるのでしょうか?いや、しかし僕らは洋服屋として当たり前のことを当たり前にやりたい。 同じ柄のカバーオールを売っていた4月の下旬に、街中でショーツを穿きたい気分になっていた人なんて(僕らを含めて)まだいなかったはずだ。だから、きちんと暑くなってから紹介しようと思っていた。というのが正直なところ。 例えば2月や3月にショーツを予約しても、6月には気分が変わってしまうことを僕らは身をもって知っている。実際にその洋服を見に着ける季節になってから、その時々の気分に乗せて洋服を紹介すること。当たり前のことだけど、意外と少なくなってきたんじゃないかなぁ。 こんにちは、鶴田です。
” m’s braque for MANHOLE “ – 2 INTUCK SHORTS – [陶芸柄] Size : 36 / 38 / 40 ¥48,400-(tax included)
ということで、この陶芸柄ショーツ。 改めて、というか久しぶりのこの柄の洋服を見て思うのは「2か月たっても相変わらずカッコいいな」ということ。
フロントは簡素なジップアップ仕様。2プリーツのゆったりとした腰回り。風が通り抜け易そうな広い裾口。 河上が言うように、たしかにこのショーツは「暑い時期にぴったり」だと思う。すべてのディテールが夏を指し示している。暑い夏は誰だって涼しく過ごしたいに決まっているのだから。
僕は昔からテーラードジャケット+ショーツという組み合わせが好きだ。足元はレザーシューズ、なんならソックスもきちんと履きたい派。ショーツを穿くときは長袖を着る。半袖を着るときは長ズボンを穿く。自分の中で不文律のルール、とまでは言わないけれど十中八九、その感覚に従った方が気持ちがよいことを僕は自分で知っている。 「肌見せの分量」は、人それぞれが非常にパーソナルな領域の中に持っている感覚だと思う。体毛の量や肌の色、膝の位置など、すなわち自分の肉体的な特徴と向き合った結果に生まれるバランスだ。肉体は人それぞれなのだから、それについて正解や不正解を一括りに論じることはできなくて当然なのだ。 「気にしなくていいよ」「考えすぎ」「俺は全然気にならないけど」というフォローの言葉を何十篇かけようとも、それは着る本人のパーソナルな感覚の問題なので、他人が一気に覆すことが難しいことも僕は知っている。
つまり、何を言いたいのかと言うと。
他人に自分の感覚を覆してもらうのが難しいのだとしたら。
自分の感覚を根底から覆すことができるのは自分自身でしかない、ということ。
勿論「尊敬するあの人に言われたから」「自分が大好きなあの人がそうしていたから」などと、他人を媒介して芽生える新しい感覚はたしかにあると思う。 しかし、それは根本的に「人を尊敬したり」「大好きな人のことを見ていたり」する時点で既に、ひっくり返されることを望んでスタンバイの状態に自ら入っているということ。このスタンバイ状態に入るスイッチだけは、自分自身にしか入れることが出来ない。
柄物のショーツはちょっと。 ワイドな短パンは体型的に難しい。 体毛が濃いから、膝下は隠しておきたい。 色んな思惑の中で、ここまでこのブログを読んでくれた人。あなたは既に、スタンバイ状態に入っています。 その固定観念を覆すのがMANHOLEのスタッフやm’s braqueの陶芸柄ショーツであるという保証はどこにもないけれど。ただ、あなたは既に自らひっくり返されることを望んでいて、退屈と戦っていて、このまま夏になるにつれてなし崩し的に半袖半ズボンスタイルへ突入していくことを心底ではマンネリだと思っている。 だからこそ、このブログをここまで読み進めてしまっている。 ジャケット+ショーツ+ソックス+ローファーのコーディネートなんて自分では試したことねーよ、と思いながらも。
2月の気分が5月にどうなっているかなんて、分かりっこない。過去の自分と今の自分を比べることなんて意味がないから。いつだって変化は押し寄せてくる。昨日の裏が今日の表かもしれない。 だからこそ、いま目の前にある季節の中で、いま目の前にある洋服と、いま目の前にある自分の姿のままで正面から向き合うことにこそ意味があると僕は思っている。 昨日の自分ではなく、半年後の自分でもなく、現在の自分だけが「そのスイッチ」の上に手を置いているのだから。
” m’s braque for MANHOLE “- 2 INTUCK SHORTS – [陶芸柄]は6月24日(金)から発売致します。 オンラインストアへは同日正午掲載予定です。
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お客さんの口から「今年の冬は何を買いましょうかねえ。」という声が聞こえてくる時期になりました。 が、MANHOLEの夏はまだまだ続きます。 夏に必要なものは残念ながら夏にならないとわからないんです。 何故なら、夏が過ぎ去って夏が訪れるまでに毎年その暑さを、みんな忘れてしまうから。 僕も忘れています。考えたくねえ。 考えたくないんだけど嫌でも考えざるをえないほどに6月。日々忍び寄る、夏。 僕らが小さい頃はまだ違ったような気がするのですが、今は一年の中で夏が一番長くないですかね。もしかすると昔はまだ夏を楽しんでいたのかもしれない。今は夏、楽しめない。だから長い。全部気持ちの問題なのかも。 そういうわけで、暑がりの僕にとって5月〜11月中頃まで全部夏。12月〜3月までが全部冬。春と秋という概念は既に死にました。あ、あくまで個人的な感想です。 みなさん、夏の暑さをお忘れではないでしょうか。 今なんて湿度が出てきただけです。梅雨だなって感じです。こんなんで暑いとか言っちゃダメです。いや、暑いんですけど。暑いよ。やっぱり暑いって言っていいです。暑い。アイス美味い!いや、アイスは一年中美味い。夏だからじゃねえ。 夏、全然まだまだこんなもんじゃないです。確かに暑いけど今の暑さはまだムカつくことの出来る暑さ。本当の夏は間違って手をついた水溜りがお湯。夏、やべえ。口から出てくる言葉が全部暑い。「暑いって言うと暑くなるよ。」なんて、色々な人に言われてきたなあ。まあ、気持ちはわかるけどな。隣にいる人間が「暑い。」しか言わなかったら確かに嫌だよな。でも、夏は気持ちじゃなくて実際に暑いんだよなあ。 まだ6月。間違って乗ってしまった弱冷房車にイラつくこともないし、コンビニの自動ドアから漏れる冷気に救われることもありません。「なんかトイレの床が濡れてるな。」と思ったら、顔から垂れる自分の汗でした。「なんか玄関が濡れてるな。」と思ったら、靴を履くときに顔から垂れる自分の汗でした。「なんか電車の床が濡れてるな。」と思ったら、顔から垂れる自分の汗でした。夏、まじでヤバいです。 そう、日本の夏はもっと。 ムカつきさえしないほど。 悲しみや諦めに近い感情を抱くように。 どうしようもないくらい、暑い。
m’s braqueの陶芸柄シリーズ。 実はもう1型企画してました。 形は定番の2インプリーツのドレスショーツ。 毎年「これ、短パンもあったらすげえいいんだろうな。」と思っていたのですが、前回 説明したように生地のロットがえげつなかったので中々踏み切れませんでした。 踏み切った今ではえげつない生地ロットのおかげでカバーオール/フルレングスのパンツ/ショーツ、作りたかったもの全て作れたので清々しい気持ちです。
深い股上、太いワタリ幅、広い裾幅。 ざっくりしています。説明もざっくり。 去年紹介したこのモデル と同じ型。 ただ、そのままの仕様だとフロント釦が6個も付いていて着るのが面倒だったので本企画はジップフライに変更。夏は何をするにもメンドクサイ。
無地に頼るのも限界がある。 洋服屋さんが頼りがちな「表情のある生地」に頼れないのが夏です。 というわけで、この夏は柄に頼ってみませんか。 「柄」と言っても、見慣れたストライプや見慣れたチェック、既視感のあるアフリカンバティックでもない、m’s braqueオリジナルの陶芸柄。 柄のかっこよさには自信があります。 自信があるとか言っても、僕はま〜何もしていないんですけどね。 お金と勇気を出して作ってもらっただけです。でも、自信あります。だから作りました。 短パンを穿かない理由が「自分のすね毛」の方々、そろそろ夏の暑さに負けて短パン穿いてみませんか。きっとその爽快感は自分のすね毛の不快感に勝ると思います。というか僕は暑いくらいだったらすね毛の方がいい。すね毛、ダメですかね。ダメか。ダメでもいいよ。 まあ少なくとも、この柄にすね毛は勝てない。毛よりも柄に目が行きませんか。いや、出来れば毛よりも柄に目が行って欲しい、頼む、柄を見てくれ。いや、柄だけじゃない、俺を見てくれ。男性のすね毛が許せない女性の方々はパートナーへの愛で一度乗り越えてみませんか、すね毛。今、すね毛で愛が試されてます。毛も柄も許せなかったらぐうの音も出ねえ。まあいいか、この短パンを穿いてる自分が好きになれそうだったら穿いてください。 街ですれ違う女性の方々、知らず知らずの間に不快にさせてたらすみません。 だって、知らないんだもん。暑いんだもん。汗だくより、いいじゃん。というかそもそも俺のことなんて見てないな。そう思った方が楽だな。だけど誰かが見ててくれたらいいですね。きっと、誰かは見ています。 生地は前回発売したカバーオール/フルレングスのパンツと同じくシルクリネン。
暑がりなのに何かを羽織っていたい僕にとって(まだ)現実的なのは痩せたスウェットを上に着ることくらいでしょうか。これ以上ウェイトが軽いものは説明するまでも無いと思うので自分が暑くない程度にお好きにどうぞ。 ヴィンテージスウェットの古臭さを感じさせない、m’s braqueの陶芸柄。
この柄の良いところは、上に羽織るものの重みに耐えてくれる点にもあります。 本国イギリスだと合物、日本だと夏着ることなんて(僕は)絶対に無理な僕のネイビージャケットも無理なく支えてくれます。出来ればやりたい、リゾートスタイル。 でも僕は冷房の力をもってしても、夏にこんな格好は暑くて出来ない。湿度のない国に移住したい。でも、日本大好きです。日本最高! 日本に生まれていなかったら、僕はそもそも洋服を好きになっていなかっただろう。
” m’s braque for MANHOLE “ – 2 INTUCK SHORTS – [陶芸柄] Size : 36 / 38 / 40 ¥48,400-(tax included)
僕が大好きで大嫌いな日本の夏を楽しく乗り越える為に企画した、陶芸柄のドレスショーツ。 洋服一枚の変化で嫌いなものが好きになることなんてきっとあり得ない。 だけど、その可能性を少しでもその洋服から感じられるのであれば僕は、それでいいと思う。
” m’s braque for MANHOLE “- 2 INTUCK SHORTS – [陶芸柄]は6月24日(金)から発売致します。 オンラインストアへは同日正午掲載予定です。
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黒と紺の組み合わせって、メンズ服の中では最もエレガントな配色のひとつ。例えばネイビースーツにブラックカーフのシューズ、といった具合に。 その中に着るドレッシーなシャツと言えば勿論、白。 男性の最もフォーマルな出で立ちはそのカラーリングでもって完成する。「ネイビーよりも黒の方が礼服っぽいんじゃないの?」なんて声もありそうだけど。電灯が発達する前、例えば燭台の灯で見るダークネイビーは黒よりももっと深い色に見えたらしい。ミッドナイトブルーのタキシードもあるくらいなので、まんざら嘘でもないのだろう。 こんにちは、鶴田です。
半袖なのに、製品洗いなのに、なんだかエレガントに見えるシャツ。上の写真はブラック×ネイビー。ナチュラルホワイトとの二色展開。
” NICENESS “ – SLICK – COLOR : NATURAL / BLACK.N ¥49,500-(tax included)
昔のアロハシャツみたいにクラシックで男っぽい型。でも、腰ポケットが付いているので前を開けてジャケットみたいに羽織るのも良さそう。いかにも暑い場所向きのシルエットだし、実際に着てみるとかなり涼しい。
キュプラ(ジャケットの裏地なんかに使われる、ピカピカのアレ)とリネンの縮率の差を利用して立体感を出したこの素材。市松模様の織り柄に加えてパッカリングの嵐。凹凸感の鬼。リネンの張り感、キュプラの光沢感。さらにワッシャー加工。こういう凝った生地を作らせたら、NICENESSはやっぱりスゴイ。
ブラック×ネイビーを着た河上。涼しげなのにエレガント。エレガントなのに涼しそう。こういったボコボコの素材が涼しいのは平べったい素材に比べて肌との接地面が少ないから。しかも張りのある素材。ボックス状のシルエット。シャツの2/3は肌に触れないで宙に浮いているんじゃないか、って着用感。なのにエレガント。 いいなぁ。
夏はどうしても薄着になりがちなので、せめて素材感だけでも豊かに。なんてことはよく聞く話。でも結局は全体感。ムードの話。日本の猛暑下で、無理してギャッツビーみたいな恰好をする必要はない。しかし、なぜか夏になると、秋や冬には確かに存在したはずの大事なものが町に無くなっていることに気づく。それはムード。 シワシワ素材のこのシャツに、僕はなぜだか甘いムードを感じてしまう。それは冒頭に書いたようなブラック×ネイビーの話だけではない。クラシックで男っぽいシルエットだけの話ではない。 デザイナーの最も重要な仕事は生地の選定でもディテールの決定でもなく、洋服にムードをもたらすことだと思う。そして、そのムードがディテール一発で創出されることが無いこともまた事実である。生地やディテールそのものを目的とした洋服にムードが無いのは当たり前の話なのだ。 半袖なのに、製品洗いなのに、なんだかエレガントに見えるシャツ。 このコメントは洋服屋のものとは思えないくらい漠然としたものだけど、実際、それ以上でも以下でもないと僕は思う。 そうそう、こんな甘いムードのシャツにはアクセサリーもよく似合う。
艶っぽいとか色っぽいとか、安直なディテールに乗せたその手のムードはもう要らない。洋服の奥底から滲み出てくるような雰囲気、それこそが甘いムードの正体である。つまり、プロダクトそのものの強靭さが生み出す色気みたいなものなのだろう。 まるで、男みたいだなと思う。
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最近暇なので久しぶりにぼーっとしてます。5月、6月頑張りすぎました。 お付き合いいただいたお客さま、ありがとうございます。 みんな疲れているだろうから今度は一緒にぼーっとしませんか。 暇なMANHOLE、ぼーっとするには良い環境です。 こんな暇な6月は、本でもぼーっと眺めていたい。 でも自分で本屋に行って選んでも、自分が好きなものばっかり買ってしまうんだよなあ。 というわけで、今日は中台と鶴田さんに本屋さんへ買い物に行ってもらっています。 そう。僕ら性格はもちろん、当たり前のように好みもバラバラなんです。 2人とも、何を買ってくるんだろう。 明日からの暇を楽しく潰せる予感がしてわくわくしています。
僕、中台、鶴田さん、それぞれがそれぞれ異なる印象を覚えるNICHOLAS DALEYのプルオーバーベスト。 「性格も好みも違う」というのは、見えているイメージも違うということ。 同じ一つの洋服でさえ、僕らにとっては違う洋服。 特にこのベストは「長い布の真ん中に穴を開けて被った後に裾がヒラヒラして邪魔だからサイドを布で縫い付けて、便利だからポケットもつけた。」ような簡易的な洋服。 NICHOLAS DALEYの背景、プリミティブな生地柄に引っ張られて余計にそう見える。 簡易的であるが故、余計にどうにだって着ることが出来る。 ただの布に着方の正解なんて、無い。
僕はタンクトップだと思ってます。 脇が空いてるので涼しいし、タンクトップ一枚よりも当たり前のように安心感があります。 これならおじさんでも肌、出せます。
中台はベスト。 悠人みたいにアノラックの上から着てもベスト。 ポケット増えます。
鶴田さんは民族衣装。 かっこいい。今度真似します。
暑さで全てを諦めた僕。 MANHOLEの空調で寒がっている中台。 柄と素材の密度が濃い、鶴田さん。 一つの季節に同じ一つの洋服を着た場合でも、これだけ違う。 ちなみに明日同じベストを使って洋服を合わせた場合でも、僕らはきっとバラバラの格好をしていると思う。 僕ら3人ですらこれだけ着方が違うということは、お客さんの着方もきっと違うということ。 僕はその違いを目の前で実感するのが、とても楽しい。
” NICHOLAS DALEY “ – PULLOVER VEST – ¥51,700-(tax included)
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NICENESSの超高級プリントTシャツ:JARVIS。 いつものノリで「わ〜!かっこいいじゃ〜ん!」と仕入れたけど、届いた時に改めて値段を見てびっくりした。 税込で大体三万五千円くらい。 中学生の頃は「六千円のTシャツや一万円のTシャツが買えるのってどんな人なんだろうか。」と、ただただ疑問に思っていたけれど気付いたら買う側から売る側になっていました。年月と慣れってすげえな。いや、まあかっこいいからいいんですけどね。 それにしても柄がかっこいいな。最近、Tシャツになんの可能性も感じない僕でも気持ちよく仕入れられました。Tシャツ、着ていて楽しいですか?いや、それもただただ気分の問題なんだろうな。それにしても高いな。絵の描けない僕にとって、柄をデザインするのが一番すごいことに感じるんだよなあ。だから高くてもいいか、かっこいいし。いや、それにしてもたけえ。 見れば見るほどかっこいい柄だなあ。「このプリントでタンクトップ作りましょ。」なんて言葉が出かけたけれど、冷静に考えるとタンクトップを作ろうが何を作ろうがこのプリントの仕方だといずれにせよ超高級タンクトップが出来上がるのが目に見えていたので辞めました。 が、今思うと全然作ってもよかったなあ、超高級タンクトップ。なんでやらなかったんだろ。 と、NICENESSの場合、大体の物が「好きに作った結果、この値段になっちゃいましたがそれでも良いと思う人は宜ければどうぞ。」という感じだろうから、いつものように良いと思う方はいかがでしょうか。
さて、そんなNICENESSの超高級プリントTシャツ:JARVIS。 柄がかっこいいだけでなく、とてもマニアックなプリントの仕方がされています。 何版にも重ねている上で空紡糸を使用した丸胴ボディをマネキンに着せて回転させながら、一着一着プリントをしているようです。 そんな面倒なことしたらそりゃ高くなりますね〜。
どうりで、よく見てみると柄に違和感。着てみてもどこか違和感。普通じゃない。 大量生産ありきのプリント物ですが、大量生産が前提では作れない物もある。 と、ここまでは値段と物の話。
どんなに手が込んでようと、Tシャツなので着てしまえばただのかっこいいTシャツ。 更に言えばTシャツなんてその時の気分次第でどうにでも着れます。 ただただ自分が気分の良いように着てみてはいかがでしょうか。
” NICENESS “ – JARVIS – [NN トライバルTシャツ] ¥35,200-(tax included)
今の時代、「わざわざ大量生産しなかったもの」なんてザラにある。 このTシャツの良い点は「大量生産出来ない作り方」がちゃんとデザインとして視覚に訴えかけてくるところ。こんな柄が合いまくっている総柄Tシャツなんて見たことがない。柄そのものの迫力がそのまま出る。そんな大きくて小さな理由を追求して作られたNICENESSの超高級プリントTシャツ。 「六千円のTシャツや一万円のTシャツが買えるのってどんな人なんだろうか。」と思っていた僕が、今感じる「着るだけで楽しい気持ちになれるなら別に安物だろうがボロボロだろうが高級だろうが超高級だろうがなんでもいいんだよなあ。」という素直な気持ち。 それは、決して慣れや時間の経過から生まれたものだけでは無く、ただ自分の感情を動かす何かへの対価を惜しまなくなったからなのかもしれない。
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