みなさんが何かを「いいな」と思う瞬間はどんな時に訪れるでしょうか。
僕が何かを「いいな」と思う瞬間の一つは、その光景がとても自然で普通であると感じた時です。
「鶴田さん、MANHOLEにドレスシャツを並べたいので企画していただけませんか?」
そう鶴田さんにお願いしてから半年後、このシャツはMANHOLEに並びました。
半年という時間は僕からするととても短い時間ですが、20余年ドレスシャツを好きで着続けて「ドレスシャツを着ている自分が普通」という鶴田さんだからこそ、このスピードで形に出来た企画だと思います。
ハリとコシのある生地選び/色柄/ロングポイントのレギュラーカラー/狭いタイスペース/フライフロント/そして二つの胸ポケット。
英国の物理的にも硬い、雰囲気的にも堅いドレスシャツが好きな一方で、デザイナーズブランドの感覚的な部分にも共感を覚える、鶴田さんらしいシャツです。ドレススタイルだけが好きな人間、デザイナーズブランドだけが好きな人間ではこういう形にはならない。
僕はまず、このシャツをMANHOLEの普通にしたい。
なにかに映るこのシャツを着ている自分を、自然で普通の光景にしたい。
その為には着慣れるしかないのです。が、全てを劇的に変える必要なんてありません。
自分の今までの普通を織り交ぜながら、自分のいつかの普通に進んでいける懐の深さがこのシャツにはあります。
僕もいつもの鶴田さんや昨日の中台のように、自由に着てみました。
いつもの格好の僕の洋服に、ドレスシャツ。
あとはこれを僕にとっての普通にしていくだけ。
ファッションがエリートにより規定され、一般大衆がそれに追随していた時代は遥か昔。
男性服も多様化が続き、その結果何が現代風で何がそうでないのかを正確に切り分けるのが難しくなってきています。が、2022年。最早切り分ける必要なんて本当にあるのでしょうか。
古着、デザイナーズ、そしてドレスシャツ。
全部細かく分けるからわかりづらくなるだけで、全部ただの洋服でいつかは全部古着になります。
更にその「洋服」は別にMANHOLEに並んでいるものでなくても構いません。
僕らはほんの小さなきっかけになれれば嬉しい。
自分が興味がある、楽しいと思う、かっこいいと思う場所、音楽、人、物。
なんだっていいと思う。大きなきっかけはいくらでもある。
ただ、全部ただの洋服/いつかの古着でも、それを着る/利用するのは人。
大切なのはその人にとっての、その人が向かう場所にとっての、その人が生きる時代にとっての、普通。
その人にとっては自然、その人にとっては普通。
その場所にとっては自然、その場所にとっては普通。
その時代にとっては自然、その時代にとっては普通。
いいですよね。
が、その「普通」の背後にはその人ならではの生活や習慣があるし、もしかするとその「自然さ」を生み出すためにその人は努力したのかもしれません。
そしてきっと、当の本人はその「自分の普通や自然さ」が生む異常さに気付いていない。
そこもいいですよね。
僕は、自分が一朝一夕では作り出すことの出来ない誰かの何かの積み重ねに魅力を感じるのでしょう。
誰かの日常は自分にとっての非日常、誰かの自然は自分にとっての不自然なんです。
だからこそ、憧れてしまう。
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河上 尚哉
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東京都港区南青山4-1-3 セントラル青山003号室
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自由について。
こんにちは、鶴田です。
昨日の河上からキラーパスが飛んできたので、今日の僕はそれに答えてみたいと思います。
「自由」について考えるとき、例えば「ルールに縛られない」というワードは比較的簡単に(中二でも)思い浮かべることができる。ではここで「いかにも自由そうな行動・態度」=「ルールに縛られない行動・態度」をひとつ挙げてみよう。
「車のボンネット上に全裸で寝転がり大きな声で奇声を発する男を乗せたまま車は東京・青山の外苑西通りを時速120㎞で逆走していく」とか。もう道路交通法も猥褻物陳列罪も関係なし、誰も俺を裁くことはできない。規則でがんじがらめな日常にオサラバ。穴あき。うーん、自由だ。
一方でそれは「ルールや常識を破壊する行動を取っている自分への恍惚や陶酔」と言えなくもない。すでに「仮想敵」としてのルールを意識した時点で縛られているような気もする。実際に、もしそれ自体が何ら法を犯すものではなくジェットコースターに乗る程度の合法行為だった場合。逆走全裸はなかば社会現象的なエンタメとして大ブーム的になり、われもわれもとフォロワー達が殺到。むしろ外苑西通りは右側通行が当たり前となり、大衆はフルチンにも見慣れ、なんならボンネット上で全裸をサポートするためのベルトが人気商品となり、もちろん合法である以上警察が注意する筋合いもないからスリルも無し、それは日常の光景となり、ふたたび退屈がやってくる。結果としてちゃんと服を着て運転席に座り左側通行している奴の方が白バイに追われたりして、その白バイも全裸で右側通行、なんか走りづらいね左側通行に戻そうか、なんつって。服、着よっかな。
いや、何の話かというと、MANHOLEにドレスシャツが入荷した。鶴田は「自由に着てください」というけれど、ほんとに自由に着ていいんですか?という話。 「 中台の普段通りの格好に合わせてこのシャツを自由に着る楽しさを鶴田さんから紹介してもらおうと思います。楽しみです」とは、昨日のブログにあった河上の言。 例えば、ドレスシャツをほとんど着たことがない中台でも自由に着られるのか。そんな疑問に今回は実践を交えながら答えてみようと思う。
この3種類のストライプシャツを使って、中台のために鶴田がスタイリングしてみた。
実例①普段通りの中台にイエローのストライプシャツとナロータイをプラス。
実例②普段通りの中台にグレーのストライプシャツをプラス。
実例③普段通りの中台にワイン色のストライプシャツとプリントタイをプラス。
自然?不自然?
3種類のコーディネートをセットして、中台に代わる代わる着てもらいながら「どう?」と尋ねたら「全然大丈夫ですね、ドレスシャツ。イケます!」と言っていた。僕もそう思う。もはやシャツを着ていない中台の姿を思い出せないくらい、初めからシャツを着ていたような佇まいで、彼はそこにいた。
「自由に着る」という行為は、自分の中で設定した仮想敵を打倒するために振りかざす武器ではない。そんなものは自由ではない。まずはじめに「この服を着てみたいな」「あんなカッコしてみたいな」という意思があり、その意思がリアリティを生み出す。シャツを3枚重ねた堀切さんもそうだった。中台の場合もやはり根底には「ドレスシャツを着てみたい」という気持ちがあった。レザーシューズでもジャケットでもいいんだけど、これからチャレンジしてみたいアイテムを前にしたときに「仮想敵サイドのルールを意識しすぎて逆にがんじがらめになるフルチン」と「自分の傍に引き寄せてバランスを取ろうとする人」とでは着こなしのリアリティに大きな差が出ると思う。
もちろん、ドレスアイテムやハイブランドのコレクションピースなど、敷居が高いと思われがちな洋服にはやはりそれなりの強さがあるので、感覚が硬直してしまう気持ちも分かる。自分自身も20年前はそうだったから。しかし、所詮は只のシャツである。
バランスを取るということ。
中台は一見すると只の自由人に見えて、実は優れたバランサーでもあると思う。新しいアイテムを取り入れた時にも、バランス感覚を重視していると思う。今回は僕が選んだコーディネートだったけれど、実際に彼がやっても同じことなんだろう。
他人からの借り物のようなアイテムを手に入れた時、借りた相手の顔色を伺いながら着るのか。それとも、目の前で鏡に映った自分自身と向き合うのか。借り物が借り物のままで終わるのか否か、その差は大きい。前者のような状態を、僕は「不自由」と呼ぶ。
誰もが自分自身のバランスを持っている。顔の似た兄弟が同じドレスシャツと同じブレザーを着ても、微妙かつ大幅に、これほどにまで出来上がりは違うのだ。
「このシャツ、”自由に着たらいい”って鶴田さんは言いますが、本当ですか?」
そろそろ、この問いに答えよう。
「はい、本当です。ただし、自由の形は人によって異なるのだと思います」
そして、その形の本質は他人である堀切さんや僕や顔の似た兄弟の目の中には宿っておらず、あなた自身の心のフォルムと照らし合わせて見つけるべきものだとも思う。テクニックはいくらでもお店で教えることができる。しかし、リアリティをもって着るためのフォルムを見つけることはできない。そういった意味で、バランス感覚とは他人との距離ではなく、自分自身との距離を測る物差しでもあるのだ。
繰り返しになるが、僕はこのシャツをお客さんに「自由に」着てほしいと思う。心から。
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今年の春夏シーズンから始まった鶴田さん企画、MANHOLEオリジナルドレスシャツのLeonard。
白/青/ベージュの無地。
そこに新色のカーキが追加され、気付いたら8月に柄物も増えていました。
グレーのロンドンストライプは既に生地屋さんのシャツバンチから消滅してしまった為、もう追加生産が出来ない(現在庫Size:36/37/41のみ)のですが、それ以外の生地は定期的にリピートしています。
というわけで現在、MANHOLEには7色のドレスシャツが並んでいます。
ハリとコシのある生地選び/色柄/ロングポイントのレギュラーカラー/狭いタイスペース/フライフロント/そして二つの胸ポケット。
このシャツを構成する要素全てに鶴田さんのキャラクターが見え隠れ、、、いや、隠れてないな。見えてます。
このシャツは鶴田さんが現行のデザイナーズ、そして古着の両方が並ぶMANHOLEの為に企画してくれたシャツです。
鶴田さんが「MANHOLEに来るお客さんに自由に着てもらえたらいいな。」と考えながら作ったシャツです。
が、ここでドレスシャツをほとんど着たことのない中台が一言。
「このシャツ、”自由に着たら良い”って鶴田さんは言いますが、本当ですか?」
中台、ありがとう。きっと同じことを感じているお客さんもいらっしゃるはず。
なんかかっこいい気がする、ありそうでないのはなんとなくわかるけど、どう着ればいいかわからない。
ましてや自由になんて想像がつかない。たまには誰かに導いてほしい。
と、いうわけで明日は中台の普段通りの格好に合わせて「このシャツを自由に着る楽しさ」を鶴田さんから紹介してもらおうと思います。楽しみです。
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1年半前の春。前職時代の僕は先輩・後輩と一緒に中目黒でちょっとしたイベントを催した。そこにぶらりと顔を出してくれたのが、CLASSのデザイナー・堀切さんだった。いつもどおりのテンションで柔らかく挨拶をしてくれた堀切さんは、よく見るとシャツを3枚重ねて着ていた。
こんにちは、鶴田です。
僕の隣にいた先輩は堀切さんと20年以上の付き合いがあることもあってか「鶴田、鶴田、シャツを3枚重ねて着ている変な人がいるぞ。1枚着てることを忘れて、もう1枚着ちゃったのかな?」と堀切さんを指さした。もちろん、このセリフに嘲笑の意味は全く含まれておらず、むしろそれが親密さやリスペクトの感情を素直に表現した言葉であることは、先輩の笑顔を見てもすぐに分かった。
それにしても、シャツを3枚も重ねて着るなんて。ほんとに忘れちゃったのかな。でもボタンを留めるのが異常にめんどくさい時点で流石に気づくだろ。って。
CLASSから3枚重ねのシャツが届いた。生地違いのオーセンティックなボタンダウンシャツが3枚も重なっている。
すさまじいナンセンスの嵐。
生地の組み合わせは2バリエーション。こちらは1枚目に比べて和紙繊維×カシミアという謎のナンセンス素材を含む分だけ、プライスが高い。
堀切さんが作る服を見て「こんな(不思議な、おかしな、アヴァンギャルドな)洋服、ほんとに着る人いるの?」と言う人がいる。
いる。
まず、デザイナー本人が実際に着ている。
僕が堀切さんと初めて会ってから15年ほどが経つ。会うときはいつも「その日、堀切さんが何を着ているのか?」と、目を皿のようにして見てしまう。この目線は冒頭で堀切さんを「変な人」扱いしていた先輩も同様らしい。で、「面白い洋服着てるなぁ」とか「変わった着方してるなぁ」とか、こちらがそう思っていると2~3シーズン後にCLASSのコレクションで実際にそんなアイテムがリリースされたりする。
堀切さんは、自分を使って実験している。自分の感性の矛先を、まず自分に向ける。その感性のソースは、もしかするとほんとに「寝ぼけて、シャツを重ねて着ちゃった」瞬間かもしれないし、そうではないかもしれない。とにかく、自分で実験しながら「気分がいい」と思えたら、実際にそんな洋服をCLASSのアイテムとして作り始めるんだと思う。
朝、寝ぼけていたので着ているシャツの上からもう1枚シャツを重ねてしまったかのように。2枚重ねたシャツの上から、さらにもう1枚シャツを。そしてジャケットを。
そんな、ばかな。
シャツを3枚の重ねて着ていたら、前立てが多すぎてボタンを掛け違えてしまったかのように。
そんなばかな。
ちなみに、このシャツは3枚のシャツを肩とサイドだけでつなぎ合わせてある。背面はボタンダウンシャツとしてはオーセンティックな、センターボックスプリーツ。 内側のシャツ2枚は背中半分しか生地がないので、実際に3枚重ねになっているのは前身のみ、という複雑なつくり。
なので、裏返すとこんな感じ。暗い部屋でシャツを着たら、裏表を間違えてしまったかのように。着ることもできる?できない?できない?
そんな、ばかな。
3枚重ねのシャツを2着重ねたら、襟が6枚になる?
そんな、ばかな。
「そんなばかな」に僕らがリアリティを感じるのは実際にこの洋服を作った人が「そんなばかな」着方を実践していたから。ただ、堀切さんの場合は「本当に」ボタンダウンシャツを3枚重ねていた。 そして、それをファッションアイテムとして形にした。
堀切さんが作る服を見て「こんな(不思議な、おかしな、アヴァンギャルドな)洋服、ほんとに着る人いるの?」と言う人がいる。
答えは、いる。
そして、その「実在感」は洋服がハンガーにかかっているだけの状態ではなかなか発現しない。その洋服を着た人が実際に街を歩き、生活をしたという痕跡だけが「ファッションを現実へと向かわせる」のだ。それはSNS上のみで繰り広げられる見映えの問題だけでは獲得できないリアリティなのだ。
「このばかばかしいシャツを着てみたい」と思う人が「このばかばかしいシャツを着て」「街に出る」限り、このシャツはファンタジー上にのみ存在するペガサスのような存在では決して、ない。リアリティは他人の中にではなく、自分の中にだけ存在するものだと思う。
僕は、このシャツを着て街を歩きたい。それは本気でばかばかしさを信じたデザイナーの姿が僕に植え付けたリアリティだと思う。
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やっぱり最高に変で最高
こんにちは、中台です。
前のシーズンでもなんだか好評だった、RANDYの変なパンツ: Muscleが今シーズンもやってきました。
今シーズンはカーゴポケット付きで、フロッキープリントが施されていたり、生地も変わり、前シーズンからいくつかのポジティブな変化が見える。
改めて見るとすごいシルエット…楽しいです。
横から見ても後ろから見ても、自分に対して抱いたことのない違和感。
色、柄、素材の変化がどうでもよくなるほど、前後4つのコブは強烈に魅力を放っている。
前からパッと見たときにはあまり違和感に気付かないのも面白い。
いつもの河上よりキュート。
普段からこれくらい可愛く過ごして欲しいものです。
きっとこのパンツに計算は必要ない。
合わせるものなんて、鏡の前で自信がつけばなんだっていい。
自分のバランスを変えなくたっていいだろう。
思いのままに、気の向くままに。
カルチャーやバックボーンも気にしない。
理由なんていらない。
ピュアに楽しむ気持ちさえ持っていれば、このパンツは最高に変で最高。
そう思えるはずです。
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中台 竜郎
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