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お店それぞれの趣味嗜好を交えながら木型、革、ソールの仕様、付属の指定をしてオーダーするF.LLI Giacomettiには基本的に「別注」が存在せず仕様変更に留まる。と、僕は思っている。
つまり、僕らがぼーっとしている間に思いつく安直なアイデアが入り込む隙がないくらい、我々からオーダーを取る段階で既に完成しているということだ。

木型を一から作成してそれをずっと使い続ける、という手段をとれば「別注」になるのかもしれないけれど、移り気な僕たちにその方法は向いていないし「結果的にこの形の高級既製靴を数百足売った」ならば良いけれど「これから俺たちはこの形の高級既製靴を数百足売り続ける」という覚悟を決められるような自信とアイデアを残念ながら今の僕は持ち合わせていない。


僕はそんなF.LLI Giacomettiが好きだ。なんでもやらない、やらないことはやらない。
革の制約、木型の制約、工場の得意とする技術という制約、既製靴という制約。
その制約は「出来ない理由」ではない。彼らが彼らの仕事を100%行うために存在する。
やることは徹底的に、やる。

それを100%以上の物にしたいならば、我々が上がってくる靴に対して「自分たちならこの革のこの靴をこう履きたい、こう提案したい」という部分のみに向き合えばいい。わかりやすい。気持ちがいい。


今年の一月。
トランジットをミスって「空港でじっとしてるの嫌だ!」と、過ごしたアムステルダムでの深夜の半日から最終日までずっと雨だったパリ。

中台はずっとFG193、IRIS BLUEのオーストリッチを履いていた。
僕は黒のカーフの靴を2足持って行った(履いていく予定だったモンキーブーツは早々に売り切れた)ので、帰っては塩抜きして乾かして、帰っては塩抜きして乾かしての毎日だった。
中台は何もしていなかった。「毎回大変そうだねえ」と言っていた。くそー。
あいつは知らない。僕がついでにブラシをかけてあげていたことを。
そう、オーストリッチはしなやかで頑丈、雨にも強い。
加えてFG193はビブラムを履いていてノルべジェーゼ製法。
荷物を持ちたくない、天候の読めない、というか気にしたくない時の理想の選択肢と言える。

唯一彼がこの靴の文句を言っていたのは「河上、もう俺歩けないかも。無理だ」と言って立ち止まった夜。で、彼の足元を見たら靴紐を結んでいなかった。
「(へ〜これで一日歩けるんだなあ。)中台、靴紐結んだら多分大丈夫だよ。それは東京仕様だな」と言って靴紐を結んでみたら「あ、めちゃくちゃ歩きやすいわ。なんだよ。」と言って歩いていた。

そう、FG193は靴紐を結ばずに一日歩けるくらい履きやすい。
そして、靴紐を結ぶともっと歩きやすい。


F.LLI Giacometti、MARMOLADAのチャッカブーツ:FG193。
甲革はMANHOLEエクスクルーシブレザー:赤いオーストリッチ。
ちょうど赤いカーフを使い切った頃、ちょうどオーストリッチの良さを感じ始めた頃。
「そうか、難しいことを考えずに革作ってもらえばいいのか」と、思いついた。
別に「この店にしかないもの」に拘るつもりはないけれど、この革はMANHOLEにふさわしい。
そう、僕はMANHOLEに。いや、僕と中台らしいものを作りたかった。
(すぐに息切れするけど)どこかしら、何かしらに熱中したい気持ちを未だに抱えながら、僕らは生きている。

“F.LLI Giacometti” -FG193- [MANHOLE EDITION]
Forma: 282, Norvegese, STRUZZO FLAME RED
Size:39,40,41,42,43
¥220,000-(tax included)


革の色名には「FLAME RED」と書いてあった。
ちょうどいい。キンキンの冷房に心も冷えていた。
そろそろ、熱く燃えたかったんだ。

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河上 尚哉

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今シーズンよりLUTZ HUELLEを取り扱い始めました。
並べたかった理由は色々ありますが、一番の理由はMANHOLEの空気と彼らの空気が合う気がしたからです。

デザイナーはLUTZ HUELLE。
セントラルセントマーチン卒業後、1995年にMaison Martin Margielaに入社、後にマルジェラ本人のアシスタントを務め、ニットやアーティザナルラインのコレクションを任されるようになったらしい。
2000年、パートナーのDavid Balluと共に自身の名を冠したブランドを立ち上げた。

で、彼の作る洋服を知らなくても、彼の姿を見たことがある人はいると思う。
ヴォルフガング・ティルマンスの作品に登場、というか表紙も飾っているのがルッツ。
ルッツ本人やティルマンス本人の様々なインタビューにて書かれているように彼らは同窓生。
そして、その親交は今も尚続いているようだ。

1993年、若き日のLUTZ。
ポンピドゥセンターで2025年9月22日まで開催されているWolfgang Tillmansの展示にて。



“LUTZ HUELLE” – LOW PANTS – ¥111,100-(tax included)
Size: S/ M Color:BLACK


レーヨンのイージーパンツの上にウールのトラウザーズを貼り付けたようなデザイン。
「スラックスなのに楽ちん」とか「イージーパンツなのにスラックスに見える」とかそういう場所をゴールに作っているというよりも、あくまでも「それはそれ」で「これはこれ」として貼り合わせたパンツ。

トラウザーズはトラウザーズだからこそ美しく、イージーパンツはイージーパンツだからこそ色気がある。


LUTZは別々のものを一つにする努力ではなく、一つのものに別々のものを共存させるための努力をしている、気がする。

その一つの形がLOW PANTS。
イージーパンツの色気はイージーパンツとして。トラウザーズの美しさは、トラウザーズとして。


「別々だからいい。でも別々の場所にある必要はない」
そう、それはMANHOLEがオープン当初より目指すムードだ。

「あれがこうだったらいいのに」とか「これがこうだったらいいのに」とか「自分だったらこうするのに」とか「自分がもう一人いればいいのに」とか、そういう考えが頭の中をよぎる瞬間もあるけれど、僕らはやっぱり別々だからいい。別々だからそれぞれ別々の何かを集められる。
「別々の誰かと作った空間」は「もう一人の自分と作った空間」よりもきっと楽しい。

事実、LUTZが作る「別々なのに一つのパンツ」は何を合わせても楽しい。
今思うと5年間の改修期間を迎えるポンピドゥーセンターにて行われている閉館前の最後の展示:「Rien ne nous y préparait – Tout nous y préparait」も。別々なのに、一つだった。



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“CLASS” -CCFA20UNI A- ¥44,000-(tax included)
Color:WHITE Size:1, 2


CLASSのバカみたいにデカいTシャツ:CCFA20UNI A。
どれくらいデカいかっていうと、まず袖口に顔が入るくらいデカいし〜


坊主頭が二人入るし〜


「こら!服が伸びるでしょ!」と、例え怒られたとしても〜

はいはいよっこらせっと
ぽりぽり
すんっ


ってな感じで大きいです。
少なくとも「めちゃくちゃ大きいTシャツが欲しい」とイメージするめちゃくちゃ大きいTシャツの数倍はデカいのではないでしょうか。

で、形がTシャツだからTシャツって形容しているけれど、生地はドライなタッチのミニ裏毛。
カリッとしたタッチのライトウェイトな超薄いスウェット生地みたいな、、、いや、スウェット生地みたいにふわふわしてないですね。なんだろ。ドライなタッチのミニ裏毛です。
で、このデカいTシャツ、どう着るかっていうと〜

アユムくん、174cm、Size:2
禅野くん、180cm、Size:2


ただ着るだけですね。
大では小を兼ねづらくなりましたが、依然として特大は小を兼ねるということ。


さて、このTシャツは一枚で着なければいけないのかというとそうでもなく、好きなように着ることが出来ます。
数年前に仕入れたBLESS、同じくバカみたいにデカいTシャツ。これはカシミア。
既にCCFA20UNI Aと同じくらいバカみたいにデカいTシャツを持っているし実際に着ているので、僕は知っている。
バカみたいにデカいTシャツでも別に上着(テーラードでも)は余裕で羽織れるということを。


実はTシャツの下にモヘアのカーディガンを着てました〜、ってな感じでアームホールに引っかかって上がる裄丈込みでポジティブに楽しむことが出来ます。
さて、上に何か羽織れることはわかった。では下には?

フードのレイヤードは現実的



フードやダウンを下に着たら流石に「実は〜」なんて言わなくてもわかりますね。
パンパンのダウンでボリュームアップしたTシャツ、とかも面白いかもしれません。
肩パッド入りのジャケット、ゴツゴツしたレザージャケット、ポケットがたくさんあるブルゾン。
めんどくさがりで暑がりの僕は、やらないけど。
Tシャツという自分の体の形に依存する洋服なのに自分の体の形が変わる感覚。
ある種、このデニムと同じような考え方。
セルフパディング、セルフ ボディ ミーツ Tシャツ・Tシャツ ミーツ ボディ。
カットソーなので好きな時期に好きなように着ることができるけれど、このカットソーが秋冬コレクションにラインナップされる理由はもしかするとそこにもあるのかも〜ないのかも〜。
まあ、どうであれTシャツはTシャツ、好き勝手にどうぞ。

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CARUSO -MANHOLE-


書きたいことは前回書けた気がするので今日は補足。

さて、赤いジャケットのサンプルの上がりが想像以上に良かった。
「ダメだったら忘れよう」どころか「赤はもちろん作るとして、折角だからもう一色作ろうかな」と、CARUSOの用意してくれた生地スワッチをパラパラ捲ると、ウールモヘアのネイビー生地が目に止まりました。

ブリティッシュなゴリっとしたトニックもいいけど、こういうカミソリみたいにシャープなウールモヘアもいいよなあ。

数年前のSADEとの企画の際にスタイリングに使った「他人のビスポークシリーズ」の一つ、フランスのタイユール:MAX EVZELINEのネイビーブレザー。
ゲンズブールもここの顧客の一人だったそうです。
他人のビスポークらしく出るところは出ているし足りないところは足りないので、キャラクターやコーディネートで補う必要がある。
まあそんなことはさておき。
欲しかったのはこの角が立っているというかなんというか、カミソリみたいなシャープさ。
で、裏地はベースにしたARNYSや手元にあるCampsに倣って山吹色のベンベルグ。
ちなみに赤の裏地は黒、釦は何も考えずに黒のナットにしようと思ったんだけど「CARUSOは南っぽいナット釦は使わない」とのことでホーン釦。

禅野くん、180cm、Size:54
禅野くん、180cm、Size:54


3つ釦シングル、浅いVゾーンにフィッシュマウスラペル。
で、3つ釦で浅いVゾーンが持つ元々の印象はどうあれ、今見るこの「3つ釦で浅いVゾーン」というバランスは我々が慣れ親しんだあのカバーオールのような感じ。
ベースにしたARNYSの「ジャケットというよりもサックコート」というバランスも含めてそう。

50がサンプルにしたARNYSそのままの寸法、54は50の2サイズアップ。
写真だと袖丈が短く見えるので54を着てもらっていますが、禅野くんぐらい身長が高い方でも50で十分。

摩周、170cm、Size:46


で、当初赤だけ作る予定で進めていた(最初から真面目に着てもらうことを想定していない)のでサイズ展開は50,54の2サイズ予定でした。
が、ネイビーのみ「真面目に着たい人には真面目に勧められそうだな」ということで46というサイズを追加で作っています。これはこれで素直でいい。



ARNYSはもちろん素晴らしいブランドなんだろうけど、我々には関係がない。
「ARNYSだから全てが良い」と、僕たちは思わない。
CARUSOはもちろん素晴らしい工場なんだろうけど、我々には関係がない。
「CARUSOだから全てが良い」と、僕たちには思えない。

僕らは「良いもの」が欲しいわけでも「良いもの」をお客さんに渡したいわけではなく、「かっこいいもの」が欲しいし「かっこいいもの」をお客さんに渡したい。


僕らが良いと思ったものに僕らの感覚を乗せて、然るべき場所で作ってもらった。
このジャケットはARNYSやCARUSOといったどこか自分達との関係のなさを感じる他人のジャケットではなく、紛れもなくMANHOLEのジャケットなのだ。

“CARUSO” -MANHOLE-
Color:NAVY Size:46, 50, 54 ¥198,000-(tax included)


関係がないなら自分から関係を作ればいい。
少なくとも、今僕らはCARUSOの良さを他人の言葉を借りずとも自分の言葉で伝えることが出来る。
小さなお店の小さな企画に対して全力で取り組んでくれたCARUSO、ありがとう。

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「河上さん、CARUSOでARNYSの既製服を作っていた時期があるんですが、興味ありますか?」
「CARUSOもARNYSも僕らにとってあまりに唐突な気がするので、それ自体はあまり。。。あ、僕らの手元にあるすごくバランスの良いビスポークのARNYSをそのままCARUSOに作ってもらう、が可能であれば一度上がりを見てみたいです」

CARUSOとはイタリアのパルマ、ソラーニャにて1958年に創業した仕立て工房。
1990年代にはLANVINやDior、Francesco Smalto等の既製服作りも担っていたそうだ。
CARUSOのホームページにて公表されているのがそれなので、実際はもっと数多くのブランドが現在もこの工房の手を頼りにパルマに訪れているのだろう。

ARNYSは1933年にフランスのセーブル通りで創業したブランド。
「左岸のARNYS、右岸のHERMES」という文句をよく見かけるせいか、(HERMESでも注文服を扱っていた(いる?)とはいえ、我々庶民の感覚だと)このブランドの立ち位置がよくわからなくなるけれど、どちらかというとカンプスやスマルト、チフォネリなどのタイユールやアトリエに位置するブランドなのではないでしょうか。
セーブル通りってあのみんな行くHERMESがあるところじゃなかったっけ、と改めて地図を見てみたらあのみんな行くHERMESの真向かいがARNYS創業地でした。

誂えのARNYS。本店の工房で作っているからmade in FRANCEなんて当たり前。
店の住所しか記載のない、ものすごく気持ちの良いシンプルなタグ。
で「このタグがついているARNYSはビスポーク」なんて説明すら必要のないくらい、全ての工程を手で行ったことがわかる。
カーキ色のしなやかなキャバルリーツイル、山吹色のシルクの裏地。
実に品の良い、スポーティなジャケット。誂えるのが普通の人じゃないと辿り着かないような感じ。


「ジャケットを誂えるのが自分にとっての普通」みたいな貴族的ジャケット。
で、働いているお店で行われたビスポークブランドのトランクショーにて誂える、ならまだしも。
僕らのような小市民がARNYSで何度もジャケットを誂えるなんて出来るわけがないので、手元にあるこのジャケットはいうまでもなく「誰かのビスポーク」。誰かが誰かの為に誂えたもの、つまり自分と数値上の寸法が近いものを頑張って探してもどこかが合わない。
かといって大きいサイズを選んでも大きく着るために作られていないから、それもそれで難しい。
現行では手に入らない生地、現行では中々見ることの出来ない贅沢な作りなどを参考にすることは出来るけど、僕らはデザイナーでも工場の人でもなんでもなく「自分がかっこよく着ることが出来るものが欲しい」のだ。そんな僕らにとって、他人の為に作られたジャケットはやはり他人のジャケットに他ならない。

ちなみに、サイズの合わないビスポークのジャケットを手にすること自体はそんなに難しくない。
e-bayで調べれば出てくるし、テーラードの得意な古着屋さんは好きで用意しているだろう。
そうやって手にしたアルニスにチフォネリやカンプスのスーツ、トミーナッターにハンツマンやアンダーソンシェパードにキルガーやリチャードジェームスなど他人のビスポークが僕の家から溢れてMANHOLEの倉庫に無数に眠っている。

実は左右のラペル幅が異なる。意図したデザインでない限り誂えた洋服でしか目にしない左右差。


ただ、このARNYSは他人のジャケットなのに、「まあ他人のジャケットだしな」と諦めながら着る必要がないくらいバランスが良かった。サイズは既製服サイズで表すならば50くらいでしょうか。窮屈なジャケットが嫌いな怒肩の中台でも着られる、撫で肩の禅野くんでも着られる、僕でも着られる。で、その「着られる」が物理的な着られるではなく「かっこよく着ることが出来る」というのも良かった。

で、ARNYSの既製服はナポリのISAIAが担っていたというのをISAIAの人に教えてもらったことがあったのですが、CARUSOも声がかかっていたようです。
CARUSOが保管していた2006年頃の仕様書、ARNYSの名前がありました。
加えて現行のCARUSOのジャケットは(もちろんモデルにもよるだろうけど)肩周りがフィットしていてもシェイプがそんなに効いてなく蹴回しがふわふわしている印象。
「ジャケットというよりもサックコート」のようなビスポークのARNYSとの相性も良さそうだし、何より背景として非常に素直である。彼らの仕事はARNYSの80年の歴史の一部を確かに、作っていた。

“CARUSO” -MANHOLE-
Color:RED Size 50, 54 ¥198,000-(tax included)


というわけで、出来上がった真っ赤なジャケット。
バーガンディやくすんだ赤ではなく、真っ赤なウール生地。
「中台、サンプルの色何がいい?サンプルだから自分が本当に欲しい色がいいかな。で、それ見てダメだったら忘れよう」
「じゃあ、赤がいい。赤いジャケット、良いと思うんだよなあ」

ARNYSはもちろん素晴らしいブランドなんだろうけど、我々には関係がない。
「ARNYSだから全てが良い」と、僕たちは思わない。
CARUSOはもちろん素晴らしい工場なんだろうけど、我々には関係がない。
「CARUSOだから全てが良い」と、僕たちには思えない。

僕らは「良いもの」が欲しいわけでも「良いもの」をお客さんに渡したいわけではなく、「かっこいいもの」が欲しいし「かっこいいもの」をお客さんに渡したい。



僕らが良いと思ったものに僕らの感覚を乗せて、然るべき場所で作ってもらった。
このジャケットはARNYSやCARUSOといったどこか自分達との関係のなさを感じる他人のジャケットではなく、紛れもなくMANHOLEのジャケットなのだ。

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